アッバス・キアロスタミ 『トスカーナの贋作』レビュー

Review

監督には性格が悪いところもないと面白い映画は作れない

『トスカーナの贋作』は、アッバス・キアロスタミがイランを離れてから初めて撮った長編作品だ。

物語はイタリアの南トスカーナ地方にある町アレッツォから始まる。『贋作』という著書を刊行したイギリスの作家ジェームズ・ミラー(ウィリアム・シメル)がこの町を訪れ、講演を行っている。会場にいた女(ジュリエット・ビノシュ)が、ぐずる息子をもてあまし、作家の著作の翻訳者にメモを渡し、その場をあとにする。

そのメモはジェームズに届けられ、彼の関心を引いたらしい。作家は彼女が経営するギャラリーを訪れ、二人は車でルチニャーノに向かい、美術館や町を散策する。贋作について議論を交わす彼らは、カフェの女主人に夫婦と勘違いされたことをきっかけに、夫婦のように振る舞いだす。

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