『ハンター』試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『ハンター』 ダニエル・ネットハイム

ウィレム・デフォー主演のオーストラリア映画。タスマニアの大自然のなかで、絶滅したとされるタスマニアタイガーを探し求めるハンターをめぐる人間ドラマ。コーマック・マッカーシーショーン・ペンが掘り下げようとするような「狩猟」に強い関心を持つ筆者には、そそられる物語であり世界だった。

このドラマでは、森林伐採を生業とする労働者とエコロジストが対立しているが、ハンターはどちらにも属さない微妙な立場にある。しかも、彼はとあるバイオ・テクノロジー企業に雇われている。つまり、様々な力がせめぎ合う状況のなかで、彼はハンターとしての生き方や自然との関係性を問い直さざるをえなくなる。

続きを読む

『灼熱の魂』劇場用パンフレット



News

カナダの異才ドゥニ・ヴィルヌーヴの独自の話術と世界に迫る

カナダのアカデミー賞であるジニー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞など主要8部門を独占し、米国アカデミー賞の最優秀外国語映画賞にノミネートされた傑作『灼熱の魂』。この映画の劇場用パンフレットに「物語の力――偶然と必然の鮮やかな反転」というタイトルで作品評を書いています。

これを読めばどうしてももう一度観たくなる。そういう原稿になっていると思います。劇場で作品をご覧になりましたらぜひパンフもチェックしてみてください。

『メランコリア』試写



試写室日記

本日は試写を1本。

『メランコリア』 ラース・フォン・トリアー

前作『アンチクライスト』を観たときに、これはフォン・トリアーが心を病んだからこそ切り拓くことができたヴィジョンだと強く感じた。前にも引用したと思うが、渡辺哲夫の『祝祭性と狂気 故郷なき郷愁のゆくえ』には以下のような記述がある。

たとえば現代精神医学も、その解くべき封印の一つではないだろうか。絶え難い苦痛、絶望などが症状であるならば、もちろん治療という形で病気を封印すべきと思うが、生命の輝きそのもののような狂気もあり、これは本来、悲惨不毛なだけの病気でないにもかかわらず、これをも精神科医療の名のもとに封印してしまうことが少なくない

フォン・トリアーは「生命の輝きそのもののような狂気」を封印することなく、『アンチクライスト』を作った。

続きを読む

『人生はビギナーズ』試写



試写室日記

本日は試写を1本。

『人生はビギナーズ』 マイク・ミルズ

マイク・ミルズの新作。彼のプライベートストーリーの映画化だが、これはほんとに素晴らしい。というより凄い。心を揺さぶられるだけではなく、サバービアや歴史に対する視点など実に奥が深い。

マイク・ミルズの父親は、45年連れ添った妻に先立たれたあと、75歳にして「同性愛者として残りの人生を楽しみたいんだ」とカミングアウトし、その言葉通りに人生を愉しみ、告白から5年後に他界したという。

続きを読む