『Canto Negro』 by Henri Texier Nord-Sud Quintet

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南と北を結ぶクインテットはブラック・アトランティックを目指す

フランスを代表するのジャズ・ベーシストHenri Texierは、1945年パリ生まれなので、もう伝説といえるキャリアに満足してしまっても、あるいは精神的、肉体的に衰えてきてもおかしくないが、いまもこういうしっかりとしたヴィジョンを持ったアルバムを作っている。すごいことだと思う。

『Canto Negro』 (2011)

筆者が最初に連想したのが、Melvin Gibbs Elevated Entityの『Ancients Speak』(09)。TexierとGibbsでは、世代も環境も違うのでサウンドには大きな違いがあるが、ヴィジョンは同じだと思う。

『Ancients Speak』 (2009)

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『tirtha』 by vijay iyer with prasanna & nitin mitta

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ジャズ・ピアニスト、アイヤーがインド音楽に接近したわけは?

遅ればせながら、ヴィジェイ・アイヤー(Vijay Iyer)の『tirtha』(2011)である。前から聴いてはいたが、まだ取り上げていなかった。アイヤーのディスコグラフィのなかではかなり異色の作品といっていいだろう。

いまのニューヨークのジャズ界で目立つのが、アイヤーやRudresh Mahanthappa、Rez Abbasiといったインド亜大陸にルーツを持つミュージシャンたちだ。但し、アイヤーとMahanthappaやAbbasiでは、音楽の方向性が少し異なるように見える。

tirtha (2011)

Mahanthappaは、南インドの古典音楽にサックスを導入して独自の世界を確立したKadri Gopalnathに大きな影響を受け、このインドの巨匠とコラボレーションを展開する『Kinsmen』(08)や、パキスタンのカラチ生まれのAbbasiとタブラ奏者Dan WeissをメンバーとするIndo-Pak Coalition名義の『Apti』(08)で、インド音楽へと接近した。

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