『家族の庭』 『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『家族の庭』 マイク・リー

マイク・リーの作品は観ていることは観ているがあまり好きになれなかった。観ているうちに演劇と映画と一体どちらが大切なのだろうかという疑問がもたげてくる。彼の映画には、演劇が映画の上位にくる瞬間がある。だから「映画」に集中できないのだ。

『ヴェラ・ドレイク』もとてもしんどかったので、気が重かったのだが、この新作ははじめて心から酔うことができた。役者が素晴らしいことは最初からわかっているが、芝居でごりごり押してこない。空間のとらえ方とかカメラの動きに「映画」が感じられる。

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『マネーボール』 『永遠の僕たち』 試写



試写室日記

本日は試写を2本。

『マネーボール』 ベネット・ミラー

貧乏球団アスレチックスを常勝軍団に作り変えた男ビリー・ビーンをブラッド・ピットが演じる。監督のベネット・ミラーは『カポーティ』につづいて実在の人物を描くことになる。そのミラーの人物に対する鋭い洞察は『カポーティ』でも際立っていたが、新作でもフラッシュバックを交えながら、主人公の複雑な内面に迫っていく。

そんな監督のスタンスと、『ジェシー・ジェームズの暗殺』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』、『ツリー・オブ・ライフ』などで磨きがかかったブラッド・ピットの眼差しや表情のパフォーマンスが素晴らしくマッチしている。スポーツを題材にした映画でありながら、フィールドの熱狂とは違うところでしっかり見せる。冒頭からグイグイ引き込まれた。

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『ラブ・アゲイン』 『50/50』試写

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本日は試写を2本。

『ラブ・アゲイン』 グレン・フィカーラ、ジョン・レクア

スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ジュリアン・ムーア、エマ・ストーン、ジョン・キャロル・リンチ、マリサ・トメイ、ケビン・ベーコンというなんとも贅沢なキャスト。

スタイルとしては“足し算”のコメディといえる。25年連れ添った妻からいきなり離婚を切り出され、一人暮らしを始めた主人公キャルが、バーで出会ったプレイボーイのジェイコブからレクチャーを受け、自信を取り戻そうとする。というのが軸になる物語だが、そこに他の登場人物が絡む様々な伏線が加算されていき、終盤で全員が意外なかたちで勢揃いする。

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『ウィンターズ・ボーン』のすすめ

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ヒルビリーに対する先入観を拭い去り、神話的な世界を切り拓く

ただいま発売中の月刊「宝島」2011年11月号(10月25日発売)の連載コラムで取り上げているのは、新鋭女性監督デブラ・グラニックの長編第2作『ウィンターズ・ボーン』(10月29日公開)だが、この映画にはとにかくはまった。観る前からそういう予感はしていた。単に多くの賞を受賞しているだけではなく、評価のされ方が、筆者の大好きなコートニー・ハントの『フローズン・リバー』とよく似ていたからだ。

『フローズン・リバー』は、サンダンス映画祭でグランプリ受賞し、アカデミー賞で主演女優賞とオリジナル脚本賞にノミネートされた。『ウィンターズ・ボーン』は、サンダンス映画祭でグランプリと脚本賞を受賞し、アカデミー賞で作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞の4部門にノミネートされた。そこで、おそらく骨太な作品で、しかも女性監督と女優の共同作業がしっかりとしたキャラクターを生み出しているのではないかと勝手に想像していたのだが、実際の作品は期待以上だった。

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『ミラノ、愛に生きる』 『ラビット・ホール』試写

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本日は試写を2本。

『ミラノ、愛に生きる』 ルカ・グァダニーノ

故デレク・ジャーマン作品のミューズ、『フィクサー』でアカデミー助演女優賞を獲得したティルダ・スウィントンが、主演だけではなく企画の段階から深く関わり、プロデュースも手がけている作品だが、これは素晴らしい。先日観た『灼熱の魂』も圧倒されたが、こちらはまた別の意味ですごい。引き込まれた。

Bunkamura ル・シネマのリニューアルオープニング作品ということで、ミラノの上流社会とかファッションとかメロドラマとか、それらしいカラーに染められた世界にはなっているが、まったく違った見方ができる。

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