『ガザを飛ぶブタ』監督と主演女優に取材

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ジャーナリスティックな視点と強烈なユーモアのコントラスト

TIFFのコンペ作品『ガザを飛ぶブタ』の監督シルヴァン・エスティバルと主演女優のミリアム・テカイアにインタビューした。フランス人のエスティバルは、ジャーナリスト、カメラマンであり、小説や伝記を書く作家でもある。ちなみに彼の小説「Le dernier vol de Lancaster」は、カリム・ドリディ監督、マリオン・コティヤール、ギョーム・カネ主演で映画化されている。筆者は観たことないが、どうも原作の脚色がひどかったらしく、これなら自分で作れると思ったことも、映画に進出した理由のひとつになっているとのこと。

試写室日記でも少し書いたと思うが、一方で非常にジャーナリスティックな視点を盛り込みながら、ブタから精子をとるためにブタのピンナップを作ってしまうというような、この極端な振幅はどうも性分であるようだ。

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『キツツキと雨』 『ガザを飛ぶブタ』 『別世界からの民族たち』試写

試写室日記

22日から始まるTIFF(東京国際映画祭)の上映作品を3本。

『キツツキと雨』 沖田修一

『このすばらしきせかい』や『南極料理人』の沖田監督作品。役所広司と小栗旬のやりとりがあまりに可笑しくて、観ているあいだに何度吹き出してしまったことか。引き延ばしたり、スパッと切るドラマの間やタイミングも絶妙で。

『南極料理人』は原作があったので、設定や人物の関係がいくぶん整いすぎているところがあったが、この新作は『このすばらしきせかい』をシュールに発展させた感じ。『このすばらしきせかい』の主人公の若者と叔父さんの関係が、駆け出しの映画監督と木こりの関係に引き継がれている。

沖田ワールドに欠かせない古舘寛治が今回は狂言回しのようなポジションを担い、『このすばらしきせかい』で古舘が占めていたポジションに役所広司が入っているのだが、これがまたはまっている。それにしても映画監督と木こりがこんなふうに結びついてしまうなんて、面白すぎる。

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『海洋天堂』 『アリス・クリードの失踪』 『いのちの子ども』試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『海洋天堂』 シュエ・シャオルー

『北京ヴァイオリン』の脚本家として注目を集めたシュエ・シャオルーの監督デビュー作。撮影はウォン・カーワイ作品でおなじみのクリストファー・ドイル。主演はアクションを封印したジェット・リー。末期癌で余命いくばくもない父親が、ひとり残される自閉症の息子のために奔走する。

単に親子の絆を描くだけではなく、自閉症の息子という“他者”の世界が意識されている。この映画のなかでは、自閉症の世界は海の世界として表現される。父親が勤める水族館の水槽のなかを自由に泳ぎ、水中から父親を見る息子と、水槽のガラスを隔てて息子を見る父親。

その壁がどのように消し去られるのか。映画は海で始まり海で終わるが、その間に海が象徴するものが変わっていく。

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3/19 『僕の心の奥の文法』特別上映会が中止に



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この度の大地震の被害に遭われた皆様、関係者の方々に心よりお見舞い申し上げます。

3月19日(土)に予定されていたニル・ベルグマン監督の『僕の心の奥の文法』(第23回東京国際映画祭サクラ グランプリ受賞作品)の上映会に、トークのゲストとして参加させていただくことになっておりましたが、大地震の影響により中止が決定いたしました。いずれまた上映される機会が訪れることを期待したいと思います。