『BIUTIFUL ビューティフル』試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『BIUTIFUL ビューティフル』 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

『アモーレス・ペロス』『21g [21グラム]』のレビュー、あるいはイニャリトゥとコンビを組んでいた脚本家ギジェルモ・アリアガの監督作『あの日、欲望の大地で』のレビューで書いてきたように、複数の物語を断片化し、時間軸を操作し、再構成するようなイニャリトゥのスタイルにはずっと違和感を覚えてきた。

一方で、場の空気やエモーションを重視するような撮影を行いながら、それが切り刻むことを前提にしているのがどうにも不自然に思えたからだ。最初はストレートな表現だったものが、途中からそういうスタイルに変化したというのならまだわかるが…。

しかし、この新作ではそのスタイルを完全に放棄している。流れのなかで引き出され、積み重ねられていくエモーションはやはりすごい。しかも、ディアスポラへの関心や死者との見えない繋がりなどの要素が絡み合い、これまでのスタイルを放棄したからといって世界の広がりが失われているわけでもない。