『マクダルのカンフーようちえん』 『桐島、部活やめるってよ』 『鍵泥棒のメソッド』 試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『マクダルのカンフーようちえん』 ブライアン・ツェー

子ブタのキャラを主人公にした「マクダル」シリーズの最新作。以前公開された『マクダル パイナップルパン王子』とは違い、今回は日本語吹き替え版なので、細かなニュアンスがいくぶんぼやけている気がしないでもないが、それでも様々な“含み”が埋め込まれていることは読み取れる。

筆者が最も印象的だったのは、“発明”と“推手”の対比だ。

この映画には、マクダルの18代前のご先祖様であるマクデブが登場する。彼は発明家でもあり、電話やクレジットカードなど様々なものを発明したことになっている。だが、それらは役に立たなかった。その訳は、時代が早すぎたというのとはちょっと違う。たとえば、電話が分かりやすいと思うが、発明してもそれを使って話す相手がいなかったのだ。つまり、他者との関係性がないから、役に立たなかったということになる。

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『トガニ 幼き瞳の告発』 『苦役列車』 『ギリギリの女たち』 試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『トガニ 幼き瞳の告発』 ファン・ドンヒョク

試写を観る前に漠然と想像していた作品とは違っていた。これは、いい意味で、ということだ。筆者は、実際に起こった事件をリアルに描き、立場の弱い少年少女たちに性的虐待を行っていた加害者たちを糾弾、告発する作品を想像していた。

実際に作品を観た人は、まさにそういう映画ではないかと思うかもしれない。確かに、少年少女の痛みや恐怖、不安がひしひしと伝わってくるリアルなドラマであり、心を揺さぶる告発になっている。しかし、後半に入ると別の要素が見え隠れするようになる。

韓国の軍事主義については、イム・サンス監督の『ユゴ 大統領有故』やユン・ジョンビン監督の『許されざるもの』のレビューなどで触れているが、この映画でも内面化された軍事主義が意識されているように思える。そこに告発とは違う視野の広がりや深みがある。詳しいことはあらためてレビューで。

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『ファミリー・ツリー』劇場用パンフレット



News

ジョージ・クルーニー主演の話題作!5月18日(金)ロードショー

本年度アカデミー賞で脚色賞に輝いたアレクサンダー・ペイン監督の最新作『ファミリー・ツリー』の劇場用パンフレットに、「連綿とつづく生の営み」というタイトルで、これまでのペイン作品(『ハイスクール白書 優等生ギャルに木をつけろ!』『アバウト・シュミット』『サイドウェイ』)を踏まえて新作の魅力を探るコラムを書いています。

ペイン作品といえば、人生の危機に直面した主人公の姿がすぐに思い浮かんできますが、筆者は、もうひとつ、まったく違った共通点があるところに興味を覚えていました。そして、『ファミリー・ペイン』では、これまであまり目立たなかったその共通点が、より明確になっています。コラムでは、そのあたりから作品の魅力に迫っています。

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『クーリエ 過去を運ぶ男』 『ジェーン・エア』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『クーリエ 過去を運ぶ男』 ハニ・アブ・アサド

自爆テロを通してパレスチナ人の若者の生と死を見つめた『パラダイス・ナウ』で注目を集めたハニ・アブ・アサド監督の新作。凄腕のクーリエ(運び屋)が、誰も顔を知らず、生死すら定かではない謎の人物イーヴル・シヴルに鞄を届ける仕事を強要される。猶予はわずか60時間。

タフガイのクーリエにジェフリー・ディーン・モーガン、クーリエと行動をともにするアナにジョシー・ホー、FBI捜査官にティル・シュヴァイガー、殺し屋夫婦にリリ・テイラーとミゲル・フェラー、鍵を握る男マックスウェルにミッキー・ロークという顔ぶれ。

アブ・アサド監督のオリジナルな企画ではなく、オファーを受けて作った作品で、くせのあるキャラクターとか、ニューオーリンズやラスヴェガスが醸し出す雰囲気は嫌いではないが、気になるのはどこからこういうストーリーを思いついたのかということだ。

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『幸せへのキセキ』 『少年は残酷な弓を射る』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『幸せへのキセキ』 キャメロン・クロウ

原作は、イギリス人のジャーナリスト、ベンジャミン・ミーが書いた『幸せへのキセキ~動物園を買った家族の物語』(興陽館刊)。著者とその家族が、リスクを背負って荒廃した動物園を買い取り、動物たちを救い、喪失を乗り越えて新たな生活に踏み出していく実話だ。

これまでずっとオリジナルの脚本で作品を作ってきたキャメロン・クロウにとっては、はじめての原作モノということになるが、プロダクション・ノートに個人的に非常に興味をそそられる記述があった。

クロウは、売れっ子のマット・デイモンにベンジャミン役をオファーするにあたって、「脚本と一緒に、1時間近い音楽のセレクションと、『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』(83)のソフトを送る」というユニークな方法をとったというのだ。

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