5月3日(木):曇りのち雨:御幸参道本通り→蓮浄院跡→阿弥陀堂
天候がよくないので本日の登山は諦め、大山情報館でいただいた「僧兵コース案内図」をたよりに大山寺周辺を歩くことに。最初に行きたい場所は決まっていた。志賀直哉ゆかりの蓮浄院跡だ。志賀直哉は大正3年の夏にこの宿坊に滞在し、そのときの体験をもとに『暗夜行路』の終盤にある大山を描いたといわれている。
10年ほど前には宿坊だった建物がまだ老朽化した状態で残っており、記念館として復元する計画が持ち上がったが、故人の遺志で説明板を設置するだけにとどまった。志賀直哉は遺言に「記念碑や記念館は一切断る事」と記していたという。いまはどうなっているのか。
荷物を預けた吉野旅館の前から参道本通りを上がっていく。GWだというのに、天気のせいか人影もまばらだ。好天であれば参道の先に大山の山容を拝めるはずだが、なにも見えない。蓮浄院跡は夏山登山道の入口にあるので、明日も同じ道を通ることになる。足湯を過ぎ、土産物の岩田屋の角を右に曲がって進むと、佐陀川に出る手前にかなり立派なモンベル大山店が建っているのにちょっと驚く。こういう場所に専門店があるのは珍しいが、後で吉野旅館のご主人に尋ねてみたら、モンベルの経営者が大山に愛着を持っていて、ここに店を出したのだそうだ。


モンベル大山店の前で大山パークウェイに合流し、佐陀川にかかる大山寺橋を渡ると、左手に南光河原駐車場がある。けっこう車がとまっていて、登る準備をしている人たちがいる。さらに車道を少し進むと左手に階段があり、これを上がっていくと木立のなか、左側に蓮浄院跡の石垣が見えてくる。あとからきた登山客の集団がわれわれを追い抜き、夏山登山道を上っていく。
『暗夜行路』の主人公・時任謙作は、大山という淋しい駅で汽車を下り、俥(くるま)に乗り、車夫に案内されて大山に向かう。蓮浄院に到着する場面はこのように描写されている。
「二人は河原を越し、急な坂路を薄暗い森の中へ登って行った。右が金剛院、左が一段高くなって蓮浄院だった」


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