ミシェル・アザナヴィシウス 『アーティスト』 レビュー

Review

サイレント映画から新たな魅力を引き出す現代的なアプローチ

サイレント映画がなぜそれほど大きな注目を集めるのか? ミシェル・アザナヴィシウス監督の『アーティスト』が世界の映画賞を席巻しているという話題を耳にしたとき、筆者はそんなふうに感じていた。しかし実際に作品を観て、理由がよくわかった。これはかつてのサイレント映画を単純に現代に甦らせただけの作品ではない。そこにはサイレントというスタイルに対する現代的なアプローチが見られる。

筆者がまず面白いと思ったのは導入部の表現だ。映画は、ジョージ・ヴァレンティン主演の新作『ロシアの陰謀』が上映されているところから始まる。私たちはいきなりサイレント映画のなかでもう一本のサイレント映画を目にする。劇中のスクリーンでは、ジョージ扮するヒーローの活躍が描かれる。さらに新作の映像だけではなく、客席の様子も映し出される。そのとき私たちは、観客が息を呑んだり、拍手をしたりする姿から、スクリーンで起こっていることを想像している。

続きを読む