『幸せへのキセキ』 『少年は残酷な弓を射る』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『幸せへのキセキ』 キャメロン・クロウ

原作は、イギリス人のジャーナリスト、ベンジャミン・ミーが書いた『幸せへのキセキ~動物園を買った家族の物語』(興陽館刊)。著者とその家族が、リスクを背負って荒廃した動物園を買い取り、動物たちを救い、喪失を乗り越えて新たな生活に踏み出していく実話だ。

これまでずっとオリジナルの脚本で作品を作ってきたキャメロン・クロウにとっては、はじめての原作モノということになるが、プロダクション・ノートに個人的に非常に興味をそそられる記述があった。

クロウは、売れっ子のマット・デイモンにベンジャミン役をオファーするにあたって、「脚本と一緒に、1時間近い音楽のセレクションと、『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』(83)のソフトを送る」というユニークな方法をとったというのだ。

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今週末公開オススメ映画リスト2012/03/22

週刊オススメ映画リスト

今回は『マリリン 7日間の恋』と『テイク・シェルター』の2本です。

『マリリン 7日間の恋』 サイモン・カーティス

『マリリン 7日間の恋』の物語は、後にドキュメンタリーの監督として名を残すコリン・クラークが書いた二冊の回顧録がもとになっている。筆者はどちらも読んでいないが、プレスによれば、一作目の『The prince, the Showgirl, and Me』では、『王子と踊り子』の第3助監督を務めたクラークの目に映ったモンローとローレンス・オリヴィエという二人の世界の軋轢が主に描き出され(40年前の出来事だが、クラークは撮影中、毎晩日記をつけていた)、二作目の『My Week with Marilyn』では、クラーク自身がマリリンとイギリス郊外を旅した一週間の出来事が記されているという。

この映画の成功の要因には、二冊の回顧録を巧みに組み合わせた脚本を挙げてもよいだろう。その結果として、映画の撮影現場が険悪な空気に包まれ、修羅場と化していくのに対して、その外でまるで映画のようなロマンスが芽生えていくという皮肉でめりはりのある物語が生まれた。

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ジェフ・ニコルズ 『テイク・シェルター』 レビュー

Review

“不安の時代”を象徴的かつリアルに浮き彫りにした出色の心理スリラー

リーマン・ショックから異常気象による災害まで、いまの世の中には日常がいつ崩壊するかわからないような不安が渦巻いている。アメリカの新鋭ジェフ・ニコルズ監督の『テイク・シェルター』では、鋭い洞察と緻密な構成によってそんな平穏に見える日常に潜む不安が掘り下げられていく。

掘削会社の土木技師であるカーティスは、妻のサマンサと聴覚に障害のある娘ハンナと、温かい家庭を築いていた。ところが、あるときから幻覚や幻聴、悪夢に悩まされるようになる。

迫りくる巨大な竜巻、茶色っぽくて粘り気のある雨、空を覆う黒い鳥の大群、突然牙をむく愛犬、凶暴化する住人など、あまりにもリアルなヴィジョンが彼の現実を確実に侵食していく。やがて彼は、避難用シェルターを作ることに没頭しだす。

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