今週末公開オススメ映画リスト2012/03/22
- 2012年03月22日
- 映画, 週刊オススメ映画リスト
- アメリカ, グレッグ・ストラウス, ケネス・ブラナー, コリン・クラーク, コリン・ストラウス, サイモン・カーティス, ジェシカ・チャステイン, ジェフ・ニコルズ, ジュディ・デンチ, マイケル・シャノン, マリリン・モンロー, ミシェル・ウィリアムズ, 実話, 家族, 狂気, 自然
今回は『マリリン 7日間の恋』と『テイク・シェルター』の2本です。
『マリリン 7日間の恋』 サイモン・カーティス
『マリリン 7日間の恋』の物語は、後にドキュメンタリーの監督として名を残すコリン・クラークが書いた二冊の回顧録がもとになっている。筆者はどちらも読んでいないが、プレスによれば、一作目の『The prince, the Showgirl, and Me』では、『王子と踊り子』の第3助監督を務めたクラークの目に映ったモンローとローレンス・オリヴィエという二人の世界の軋轢が主に描き出され(40年前の出来事だが、クラークは撮影中、毎晩日記をつけていた)、二作目の『My Week with Marilyn』では、クラーク自身がマリリンとイギリス郊外を旅した一週間の出来事が記されているという。
この映画の成功の要因には、二冊の回顧録を巧みに組み合わせた脚本を挙げてもよいだろう。その結果として、映画の撮影現場が険悪な空気に包まれ、修羅場と化していくのに対して、その外でまるで映画のようなロマンスが芽生えていくという皮肉でめりはりのある物語が生まれた。
撮影現場の空気が険悪になるのは、舞台で培われてきたオリヴィエの演技とモンローがこだわるメソッド・アクティングが相容れないからだが、そこにはもう少し違った側面があるように思える。
かつて筆者がヴィンセント・ギャロにインタビューしたとき、彼は演技者を“アクター”と“ムーヴィースター”に分け、その違いを以下のように説明していた。
「アクターというのは、俳優として認められるために何かを証明しなければならないような仰々しさがある。 演技にとりつかれているんだ。25年前にデ・ニーロが出てきたとき、彼はムーヴィースターだった。カリスマがあり、イカしてた。 でも演技にこだわりだして、どんどんアクターに変貌し、オレは耐えられなくなった。デ・ニーロになりたいっていう若い連中がたくさんいてうんざりするよ。 演技があまりにも芸術的になると映画のなかでは生きないんだ。その点、ウォーレン・ベアティは素晴らしかった。彼はどんな作品でも自然体でフィルムメイカーと協調関係を築き上げていた。 ムーヴィースターというのは、人類の進化のなかに無理なく適応しているコンセプトなんだよ」
このギャロの言葉を踏まえるなら、モンローはムーヴィースターで、最終的にオリヴィエは、ムーヴィースターとしてのモンローを受け入れるといえる。そして、それと同時に皮肉な物語の図式も逆転し、ほろ苦い結末を迎える。
人を吸い寄せる愛らしさとそこに潜む孤独を自然な演技で表現してみせたミシェル・ウィリアムズ。彼女の次回作は、『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』で監督に進出したサラ・ポーリーの新作『Take This Waltz』。
『テイク・シェルター』 ジェフ・ニコルズ
巧妙な伏線と細やかな心理描写によって、“不安の時代”を浮き彫りにする出色の心理スリラー。まずは『テイク・シェルター』レビューをお読みください。
いくら伏線や心理描写に力点が置かれていても、役者に表現力がなければ生きてこない。掘削会社の土木技師で、統合失調症を疑いながらも、それをはっきりさせることを避けてシェルターの建造に没頭する男の複雑な心理を、舞台から映画に活動の場を広げ、『レボリューショナリー・ロード』、『ランナウェイズ』、『ロシアン・ルーレット』などで頭角を現してきたマイケル・シャノンがリアルに表現。さらに一家が崩壊する危機に直面して、激しく動揺しながらも夫を支えようとする芯の強い妻を、『ツリー・オブ・ライフ』、『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』のジェシカ・チャスティンが好演している。