シャロン・マグアイア 『ブローン・アパート』レビュー

Review

テロで家族を奪われたヒロインはいかにして喪失を受け入れるのか

『ブローン・アパート』のヒロインは、警察の爆弾処理班の夫と4歳の息子とロンドンのイーストエンドに建つ公団に暮らす“若い母親”(ミシェル・ウィリアムズ)だ(この映画では彼女の名前は明確にされない)。夫の危険な仕事が大きなストレスになっていた彼女は、パブで出会ったジャスパー(ユアン・マクレガー)と関係を持ってしまう。彼は公団の向かいに建つジョージアン様式の建物に暮らす新聞記者だった。

そして事件が起こる。夫と息子をサッカー観戦に送り出した彼女は、路上で偶然再会したジャスパーと情事に耽っていた。そのときテレビのサッカー中継が爆音にかき消される。スタジアムで自爆テロが起こったのだ。このテロで息子と夫を亡くした彼女は、罪悪感と喪失感に苛まれる。ジャスパーと夫の上司だったテレンスが、そんな彼女に手をさしのべようとするが、やがてテロ事件をめぐる秘密が明らかになる。

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1月29日(土)より銀座シネパトス他にて全国順次ロードショー (C) 2008 CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION/INCENDIARY LTD. ALL RIGHTS RESERVED

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『ブローン・アパート』『サラエボ、希望の街角』『ランナウェイズ』試写

試写室日記

試写を3本観た。

『ブローン・アパート』 シャロン・マグアイア

チラシでは「欲望と心を引き裂く、愛と裏切りのサスペンス」という触れ込みになっているが、実際に観たらまったく違う印象を受けるはず。海外では賛否がはっきり分かれているようだが、否定派はテロ絡みのサスペンスか、ミシェル・ウィリアムズユアン・マクレガーのメロドラマを期待して落胆したのではないか。

筆者はすんなり入り込めた、というより引き込まれた。この映画の中心にあるのは、幼いわが子を亡くしたヒロインの喪の作業で、それにテロ事件の裏に潜む真実が影響を及ぼす(ビンラディンへの手紙=モノローグはない方がいいと思うが…)。テロのことを考えなければ、 『オール・アバウト・マイ・マザー』『心の羽根』『まぼろし』などに近い。ミシェル・ウィリアムズ、好きな女優だが、この映画でも存在感が際立っている。詳しいレビューは近いうちに。

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