『ブローン・アパート』『サラエボ、希望の街角』『ランナウェイズ』試写

試写室日記

試写を3本観た。

『ブローン・アパート』 シャロン・マグアイア

チラシでは「欲望と心を引き裂く、愛と裏切りのサスペンス」という触れ込みになっているが、実際に観たらまったく違う印象を受けるはず。海外では賛否がはっきり分かれているようだが、否定派はテロ絡みのサスペンスか、ミシェル・ウィリアムズユアン・マクレガーのメロドラマを期待して落胆したのではないか。

筆者はすんなり入り込めた、というより引き込まれた。この映画の中心にあるのは、幼いわが子を亡くしたヒロインの喪の作業で、それにテロ事件の裏に潜む真実が影響を及ぼす(ビンラディンへの手紙=モノローグはない方がいいと思うが…)。テロのことを考えなければ、 『オール・アバウト・マイ・マザー』『心の羽根』『まぼろし』などに近い。ミシェル・ウィリアムズ、好きな女優だが、この映画でも存在感が際立っている。詳しいレビューは近いうちに。

『サラエボ、希望の街角』 ヤスミラ・ジュバニッチ

関心のある題材であり、物語にも興味を覚えるのだが、女性監督ヤスミラ・ジュバニッチの想いが、映像というかたちで表現されきっていない。寄るでもなく、引くでもなく、フィックスでもなく、刻むでもなく、じっくり回すでもなく、饒舌でもなく、沈黙でもなく、曖昧な距離と時間で、半端にフラットな映像がつづいていく。好意的に考えるなら、あまりにもデリケートな題材であるために、はれ物に触るようなスタンスをとらざるをえなかったということになる。

『ランナウェイズ』 フローリア・シジスモンディ

ランナウェイズを知らない世代の人でも、ポール・トーマス・アンダーソン『ブギーナイツ』が好きな人は必見だ。サンフェルナンド・ヴァレー出身のアンダーソンがポルノ男優ジョン・ホームズにインスパイアされて作った『ブギーナイツ』と、同じくサンフェルナンド・ヴァレー出身のシェリー・カーリーが書いた原作をもとにしたこの映画が重なってみえるのは決して偶然ではない。

『E.T.』『SAFE』『ダウン・イン・ザ・バレー』も間もなく公開の『愛する人』も背景にはサンフェルナンド・ヴァレーがある。サバービアやショービジネスが交差するこの地域は映画の宝庫でもある。『ランナウェイズ』の詳しいレビューはまた近いうちに。