『別離』 試写



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試写室日記

本日は試写を1本。

『別離』 アスガー・ファルハディ

世界的な注目を集めるイラン映画の異才ファルハディの新作。試写がはじまったらすぐに観にいきたいと思っていたが、なかなかタイミングがあわず、ちょっと遅くなってしまった。すでに世界各国で60冠を超える映画賞に輝いているということだが、それも当然だろう。

ファルハディの前作『彼女が消えた浜辺』(09)は、イランに限らずどこでも成り立つ物語に見えながら、実に巧妙にイランの歴史と現実が掘り下げられていた。筆者は『彼女が消えた浜辺』レビューで、イラン出身の評論家ハミッド・ダバシの著書『イラン、背反する民の歴史』を引用しつつ、この映画の背後にイランの中流と貧困層の非常に複雑な関係が潜んでいることを指摘した。


『別離』ではそんな現実が前面に出され、家族のドラマが現代イラン社会の縮図になっている。劇場かDVDで『彼女が消えた浜辺』を観て、あまりぴんとこなかったという人は、この『別離』を観てからもう一度観なおすことをおすすめしたい。『別離』に縮図となってあらわれている世界の断片が見事にすくいあげられていることがわかるからだ。

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