フランソワ・オゾン 『危険なプロット』 レビュー



Review

新作にはオゾンが編み出してきた様々な話術が凝縮されている

ある中流家庭を舞台にしたフランソワ・オゾンの長編デビュー作『ホームドラマ』では、父親がネズミという異物を家に持ち込んだことをきっかけにして、家族がそれぞれに自己を規定していた枠組みから解き放たれ、現実と幻想の境界が曖昧な世界へと踏み出していく。

この映画のプロモーションで来日したオゾンは、現実と幻想についてこのように語っていた。

ぼくは、夢とか幻想と現実を同次元で描きたいと思っている。幻想や夢は現実と同じくらい重要であり、人間が見えてくる。次回作では三面記事の実話がもとになっているけど、次第に実話から離れていく。人を殺した若い男女が死体を捨てるために森に入っていくけど、現実の世界で罪を犯したことに対する迷いと森のなかで迷うことがダブっていくことになるんだ」(※次回作とはもちろん『クリミナル・ラヴァーズ』のことをさしている)

オゾンはデビュー以来、様々な設定やスタイルで夢や幻想と現実を同次元でとらえるような世界を作り上げてきた。『しあわせの雨傘』につづく新作『危険なプロット』は、彼がこれまでに編み出した話術を一本に凝縮したような作品といえる。

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