ジョー・コーニッシュ 『アタック・ザ・ブロック』 レビュー



Review

エイリアンというプリズムを通して描き出される公共団地の世界

ジョー・コーニッシュ監督の『アタック・ザ・ブロック』は、仕事を終えた見習い看護師のサムが、帰宅途中に暗い夜道でストリート・キッズたちに囲まれるところから始まる。彼女は恐怖のあまり、財布や指輪を差し出すが、そのとき明るく光る隕石が駐車中の車に激突する。サムはその隙に逃げ出し、落下物の正体を確かめようとしたキッズの前には、エイリアンが現われる。

この映画を観ながら筆者が思い出していたのは、初期のスピルバーグ作品だ。拙著『サバービアの憂鬱』のなかで、スピルバーグについて書いた第10章には、「郊外住宅地の夜空に飛来するUFO」というタイトルがついているが、“UFO”が“郊外住宅地”に飛来するのは偶然ではない。

郊外育ちのスピルバーグは、タンクローリーやサメ、UFOやエイリアンといったガジェットというプリズムを通すことによって、郊外の現実や郊外居住者の心理を巧みに描き出してみせた。

『アタック・ザ・ブロック』に登場するストリート・キッズたちは南ロンドンの低所得者向けの公共団地に暮らしているが、その団地の周辺に次々と隕石が落下してきて、エイリアンが暴れ出すのも偶然ではない。

続きを読む