『90年代アメリカ映画100』ついに完成!



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News

いま見つめ直す世紀末の風景
いよいよ2012年4月3日発売

たいへんお待たせいたしました。昨年末に出た『80年代アメリカ映画100』につづきまして『90年代アメリカ映画100』がようやく完成いたしました。『80年代~』のバラエティ感覚や充実度とはまたひと味違った“エッジ”のある本になっているのではないかと思います。コラムの執筆陣については、以下の表紙の帯をご覧ください。表紙の画像については説明不要ですね。裏は見てのお楽しみということで(筆者も主編の佐野亨さんもすごく気に入っている画像です)。

それでは内容の方を簡単に紹介させていただきます。まず、筆者の「アメリカ社会総論」と粉川哲夫さんの「アメリカ映画のメディア的側面」、そして町山智浩さんの「アカデミー賞作品賞に見るアメリカ映画界の様相」は、『80年代~』と対になっておりますので(町山さんの場合は、既刊の『ゼロ年代~』でも同じテーマを担当していただいています)、あわせてお読みいただくとさらに視野が広がるかと思います。

『90年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)


他のコラムの執筆陣もご存知の方々ばかりですが、少しだけご紹介を。

生井英考さんといえば『ジャングル・クルーズにうってつけの日』がまず思い浮かびますが、筆者は生井さんが遠い昔に「BRUTUS」にお書きになった『ライトスタッフ』の原稿が脳裏に焼きついています。最近も試写でたまにお目にかかることはあるものの、大学の方がお忙しいのか、映画についてはほとんどお書きになってないようでしたので、この機会にぜひお願いしたいと思いました。

本書のコラムでは、「リベラリズム、グローバリズム、テロリズムの転換点」というタイトルで、『フォレスト・ガンプ』を通して90年代アメリカを読み解いていただきました。正直なところ、この映画と時代が、これほど多面的に、しかも複雑にねじれながら結びついているとは思いませんでした。

それからコラムのテーマとしてどうしても入れたかったのが、“アメリカ大統領”です。90年代には様々なかたちでアメリカ大統領が登場したり、題材にした映画が目立っていたのと、2012年が大統領選の年にあたることをふまえ、大統領と映画の関係を掘り下げられればと思ったしだいです。このテーマについては、『ウェブ×ソーシャル×アメリカ――<全球時代>の構想力』でも話題の池田純一さんにお書きいただきました。

タイトルは「大統領と映画の蜜月」、アメリカ大統領とはどういう存在なのかから始まり、90年代に大統領を扱った作品が目立った背景を掘り下げ、さらに映画からウェブへと移行する現在に至る流れが見えてくる非常に密度の濃いコラムです。

さらに、樋口泰人さんの「ドリューとモーガン 90年代アメリカ映画俳優論」、柳下毅一郎さんの「スピルバーグとキャメロンの90年代」、長谷川町蔵さんの「ヒップホップとサンプリング映画」、越智道雄さんの「冷戦後のアメリカの風景」、越川芳明さんの「オブセッションの映画、映画のオブセッション」、いずれも自信をもっておすすめできる読み応えのあるコラムになっています。

そして最後が対談です。『ゼロ年代~』は芝山幹郎さん×中原昌也さん、『80年代~』は山下敦弘さん×松江哲明さんでした。『90年代~』は、山崎まどかさんと金原由佳さんにお願いしました。『イノセント・ガールズ』と『ブロークン・ガール』の“ガール”つながり対談ですね。筆者ももちろん立会いましたが、本書のカタログ・リストに対する異論が噴出する刺激的で痛快きわまりない対談でした。本書のカタログ部分を読みながら、セレクトに不満を感じられた方々は、最後にこの対談を読んですっきりされるのではないでしょうか。