トーマス・イムバッハ 『終わりゆく一日』 特別寄稿



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時の流れと喪失を鮮やかに浮き彫りにする普遍的な物語

2013年10月26日(土)よりユーロスペースほかで全国順次公開になるトーマス・イムバッハ監督のスイス映画『終わりゆく一日』のプレス用に上記のタイトルのレビューを寄稿しています。

この映画の世界は、ユニークな素材の組み合わせで構築されています。まず、チューリッヒにあるイムバッハの仕事部屋から見える風景の映像です。彼は窓の外に広がる見事なパノラマに魅了され、15年以上に渡って撮り続けてきました。その映像には、郊外にそびえる巨大な煙突ともくもくと立ち上る煙、青空と様々に形を変えていく雲、飛び立つ旅客機、駅を行き来する列車、そして変貌を遂げていく目の前の工場地帯などが記録されています。

次に、留守番電話に残されたメッセージです。まだ新しかったこの装置に夢中になった彼は、メッセージを消去せずに収集してきました。そこには、父親の死や息子の誕生、家庭の崩壊などにまつわる言葉が刻み込まれています。


そしてもうひとつの素材が、ボブ・ディラン、シド・バレット、ビル・キャラハン、ジョン・フルシアンテらの曲を、映画のために組んだバンドで新たにレコーディングした曲の数々です。

こうした素材を、「T」という姿なき主人公を中心に再構築していったとき、そこに普遍的な時の流れと喪失が鮮やかに浮かび上がってきます。

筆者のテキストは映画の公式サイトにもアップされています。以下がそのリンクとなりますので、ぜひお読みください。

『終わりゆく一日』――時の流れと喪失を鮮やかに浮き彫りにする普遍的な物語