『ミッドナイト・イン・パリ』 『ジョイフル♪ノイズ』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ミッドナイト・イン・パリ』 ウディ・アレン

アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で脚本賞を受賞したアレンの新作。21世紀のアレンは定まった枠組みのなかで映画を作って、もはや逸脱することはないのかと思っていたが、そんなことはなかった。

プレスでは“タイムスリップ”という表現が使われているが、主人公が迷い込む世界が、本当の1920年代とは限らない。深夜0時を回った瞬間から始まる夢、あるいは妄想のようにも見え、曖昧にされているところがいかにもアレンらしい。


マイケル・シーンがいやみなインテリ男を演じてるのだが、ヒゲをたくわえているのですぐにわからなかった。『クィーン』、『フロスト×ニクソン』『4デイズ』、『Beautiful Boy』などで彼が演じている人物は、みな雰囲気が違う。

アレンの監督作としては、『人生万歳!』(09)以来の公開作になるが、それとこの『ミッドナイト・イン・パリ』(11)の間に、『You Will Meet a Tall Dark Stranger』(10)という作品があって、そちらは今年の秋に公開が予定されている。ナオミ・ワッツも出ているし、気になる。

『ジョイフル♪ノイズ』 トッド・グラフ

ジョージア州の小さな町の聖歌隊が、不況にあえぐ町を盛り上げるためにゴスペル・コンクールの頂点を目指す。クイーン・ラティファ、ドリー・パートン主演。

『キャンプ』(03)、『Bandslam』(09)につづくトッド・グラフの3本目の監督作。前二作では、主人公たちの崇拝の対象となるスティーヴン・ソンドハイムやデイヴィッド・ボウイが本人役で登場していたが、新作はこれまでの青春映画とは趣が違うので、そういう仕掛けはない。

グラフは、ピアノの先生で聖歌隊のリーダーでもあった母親をモデルにこの脚本を書いた。興味深いのは、ユダヤ系でニューヨーク出身のグラフが、ユダヤ教の聖歌隊ではなくゴスペルの聖歌隊の物語を選択し、南部を舞台にしているところだが、そのことについてはいずれまた。

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