『Live at Sint-Elisabethkerk』 by Balmorhea

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ベルギーの教会に広がるテキサスのサウンドスケープ

Balmorheaは、テキサス州オースティンを拠点に活動するインストゥルメンタル・アンサンブル。2006年にRob LoweとMichael Mullerによって結成された。ギター、バンジョー、ピアノなどを操るこのふたりに、ヴァイオリンのAisha Burns、チェロのDylan Rieck、ダブルベースのTravis Chapman、ドラムスのKendall Clarkが加わった6人組である。

筆者は固有の場所性が失われていく状況のなかで、現実に縛られない領域や次元にどのように場所性が見出され、サウンドスケープが生み出されるのかに関心を持っている。もちろん誰もがそれを意識して音楽を作っているわけではないが、Balmorheaの場合はかなり自覚的であるように思う。

たとえば、フィールド・レコーディングとインストゥルメンタルが高度に融合した2作目の『River Arms』では、スモールタウンで過ごした子供の頃の記憶や<The Summer>や<The Winter>というタイトルに表れている季節に対する感覚が場所性に結びついていた。


3作目の『All Is Wild, All Is Silent』では、テキサスの歴史を遡る。テキサスの入植の歴史は、Stephen F. Austin’s Old Three Hundredと呼ばれる集団から始まった。このアルバムのサウンドスケープは、この集団の一員で、ケンタッキー出身の鍛冶屋だったWilliam B. DeWeesが書いた『Letters From an Early Settler of Texas to a Friend』にインスパイアされている。かつてそこにあった原風景と結びついた音楽なのだ。

4作目の『Constellation』はちょっと抽象的だが、夜の静けさというか、星が瞬く夜空を鏡として映し出されたサウンドスケープといえばよいだろうか。

そして、この『Live at Sint-Elisabethkerk』は、ベルギーの教会で行われたBalmorheaのコンサートを収めたライブアルバム。『Constellation』からのナンバーを中心に、『All Is Wild, All Is Silent』から数曲を加えた構成。スタジオとは違うフレキシブルというよりはアグレッシブな演奏と、教会の建物が生み出すナチュラルなリバーブの効果が絶妙に絡み合い、引き込まれる。ちなみに新作の準備もだいぶ進んでいるらしい。

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Balmorhea
Rivers Arms – Balmorhea
All Is Wild, All Is Silent – Balmorhea
All Is Wild, All Is Silent Remixes – Balmorhea
Constellations – Balmorhea
Candor / Clamor – Single – Balmorhea
Live at Sint-Elisabethkerk – Balmorhea

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