『Canto Negro』 by Henri Texier Nord-Sud Quintet

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南と北を結ぶクインテットはブラック・アトランティックを目指す

フランスを代表するのジャズ・ベーシストHenri Texierは、1945年パリ生まれなので、もう伝説といえるキャリアに満足してしまっても、あるいは精神的、肉体的に衰えてきてもおかしくないが、いまもこういうしっかりとしたヴィジョンを持ったアルバムを作っている。すごいことだと思う。

『Canto Negro』 (2011)

筆者が最初に連想したのが、Melvin Gibbs Elevated Entityの『Ancients Speak』(09)。TexierとGibbsでは、世代も環境も違うのでサウンドには大きな違いがあるが、ヴィジョンは同じだと思う。

『Ancients Speak』 (2009)

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『’Round Midnight (Homage to Thelonious Monk)』 by Emanuele Arciuli



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20の<Round Midnight>と、ひとつの<Round Midnight>

ジャズ史のなかで異彩を放つ唯一無二のピアニスト、セロニアス・モンク。これまで様々なミュージシャンたちが、モンクのトリビュート作品を発表してきたが、Emanuele Arciuliの『’Round Midnight (Homage to Thelonious Monk)』は、そのどれとも似ていない。まったく異色の作品といえる。

Emanuele Arciuliは、イタリアのクラシックのピアニストだ。トリビュート作品では当然、モンクの生み出した様々な楽曲が取り上げられるはずだが、このアルバムでは、モンクの代表曲にしてスタンダード・ナンバーになっている<Round Midnight>だけだ。

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'Round Midnight (Homage to Thelonious Monk)

Arciuliは、これまで一緒に仕事をしてきたアメリカとヨーロッパの作曲家たちに協力を求め、それぞれの作曲家が<Round Midnight>の同じテーマの変奏を試みた。

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