『幸せパズル』 『ラスト・エクソシズム』 『ゴーストライター』試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『幸せパズル』 ナタリア・スミルノフ

アルゼンチンのナタリア・スミルノフ監督の作品。ゴンサロ・カルサーダの『ルイーサ』とか、ファン・ホセ・カンパネラの『瞳の奥の秘密』(09)とか、昨年の東京国際で公開されたディエゴ・レルマンの『隠れた瞳』(10)とか、けっこう気になるアルゼンチン映画だが、この女性監督も自然でこまやかな演出が光る。

平凡な主婦マリアは、ふとしたことから“ジグソーパズル”の才能があることに気づき、夫や息子との関係を通した自分ではなく、内面から自己に目覚めていく。

たとえば筆者が印象に残ったのは、料理とパズルのコントラスト。料理はコミュニケーションだが、夫も息子もわかってない。だから彼女はパズルにのめり込む。彼女はパズルによって内にこもるものと思う。ところが、そのパズルが、いつしかタンゴに近いものになっているというひねりがよかった。

『ラスト・エクソシズム』 ダニエル・スタム

なんだか昔のB級ホラーのように見えて、けっこう楽しめた。ストーリーについては、『ザ・ライト―エクソシストの真実―』を観たときと同じことを感じた。異常な現象が起こると、精神科か悪魔祓いかの二者択一になる。そういう前提のもとに物語が語られるが、別の世界が広がっているということもありうるわけで…。

『ゴーストライター』 ロマン・ポランスキー

だいたい同時期にポランスキーの新作とイエジー・スコリモフスキの新作が公開されるというのが面白い。どちらもディアスポラ的な体験を背負っているから、まったく違うタイプの映画でも、通じ合う空気というかイメージが浮かび上がってくる。

スコリモフスキの『エッセンシャル・キリング』では、主人公がどこでもない場所で誰でもない存在になっていく。『ゴーストライター』には、いろいろな意味でゴーストが存在している。ロバート・ハリスの原作の冒頭には、イーヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』からこんな言葉が引用されている。「私は私ではない。あなたは彼でも彼女でもない。彼らは彼らではない」

みなさん、ぜひ両方、観ましょう。