『In The Mist』 by Harold Budd

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デレク・ジャーマン、サイ・トゥオンブリー、死者との交感

ハロルド・バッドは、『Avalon Sutra』でひとたび引退宣言をしたものの、それを撤回し、音楽活動をつづけている。『In The Mist』は、この1936年生まれのコンポーザー/ピアニストの年齢にも関わる境地を感じさせる作品になっている。

全体は、“The Whispers”、“The Gun Fighters”、“Shadows”の三部で構成されている。一部は静謐なピアノ主体、二部ではパーカッシブな要素が入り(といっても基本的なトーンは変わらない)、いくぶん動的になり、三部は静謐なストリング・クァルテットで締めくくられる。

『In The Mist』

harold budd – in the mist (album preview) by experimedia

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80年代イギリス映画を振り返る その一

トピックス

先月のこと、11月刊行予定の『80年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)の原稿絡みで資料をひっくり返しているときに、行方不明になっていたアレックス・コックスの『レポマン』のパンフが出てきた。

そこに書いた原稿はまだHPにアップしていなかった。『レポマン』の作品評とかではなく、80年代中頃のイギリス映画の状況。いずれ整理してHPにアップするつもりだが、ひとまずブログで公開。いろいろ甦ってくるものがある。懐かしい。

イギリス映画界期待の新星

■■転換期にあるイギリス映画界■■

イギリス映画界は、長年にわたって衰退の一途をたどっている。映画館は年々減少し、イギリス映画自体も次々と流れ込むアメリカ映画の攻勢に押しまくられているためにその製作もままならず、そればかりか、アメリカ資本による支配が着実に浸透し、イギリス映画関係者がアメリカ映画のクルーとして活躍するというのも珍しいことではないというのが、昨今のイギリス映画界の実情である。

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