『ミケランジェロ・プロジェクト』 劇場用パンフレット

News

未来や理想をめぐる葛藤を描く、クルーニーらしい世界観

2015年11月6日(金)よりロードショーになるジョージ・クルーニー監督の『ミケランジェロ・プロジェクト』の劇場用パンフレットに、上記タイトルでコラムを書いています。監督・製作者としてのクルーニーをテーマにしたテキストで、『コンフェッション』(02)、『グッドナイト&グッドラック』(05)、『かけひきは、恋のはじまり』(08)、『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』(11)というこれまでの作品にも言及しています。

劇場で映画をご覧になりましたら、ぜひパンフレットもお読みください。

アレクサンダー・ペイン 『ファミリー・ツリー』 レビュー



Review

連綿とつづく生の営み

『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』(99)、『アバウト・シュミット』(02)、『サイドウェイ』(04)、そして7年ぶりの新作となる『ファミリー・ツリー』。アレクサンダー・ペイン監督の作品には共通点がある。人生の危機に直面した主人公の行動や心理がユーモアを交えて描き出される。そういう設定やスタイルで映画を撮る監督は他にもいるが、ペインは一線を画している。実はこの四作品にはすべて原作となった小説があるが、他の監督が映画化しても、彼のような世界が切り拓けるわけではない。

あまり目立たないが、ペインの作品には別の共通点がある。まず『ハイスクール白書』を振り返ってみよう。ネブラスカ州オマハを舞台にしたこの映画では、表彰もされた信頼が厚い教師が、上昇志向のかたまりのような女子生徒の生き方に抵抗を覚えたことがきっかけで人生の歯車が狂い出し、仕事も家庭もすべてを失ってしまう。最後に逃げるようにニューヨークに向かった彼は、自然史博物館の教育部門に就職し、新たな人生を歩み出す。筆者が注目したいのは、その自然史博物館に展示された原始人のジオラマだ。さり気なく映像が挿入されるだけなので記憶している人は少ないだろう。

続きを読む

『ファミリー・ツリー』劇場用パンフレット



News

ジョージ・クルーニー主演の話題作!5月18日(金)ロードショー

本年度アカデミー賞で脚色賞に輝いたアレクサンダー・ペイン監督の最新作『ファミリー・ツリー』の劇場用パンフレットに、「連綿とつづく生の営み」というタイトルで、これまでのペイン作品(『ハイスクール白書 優等生ギャルに木をつけろ!』『アバウト・シュミット』『サイドウェイ』)を踏まえて新作の魅力を探るコラムを書いています。

ペイン作品といえば、人生の危機に直面した主人公の姿がすぐに思い浮かんできますが、筆者は、もうひとつ、まったく違った共通点があるところに興味を覚えていました。そして、『ファミリー・ペイン』では、これまであまり目立たなかったその共通点が、より明確になっています。コラムでは、そのあたりから作品の魅力に迫っています。

続きを読む

『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』 『オレンジと太陽』 『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』 試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』 ジョージ・クルーニー

ジョージ・クルーニーにとって4作目の監督作品。振り返ってみると、初監督作品の『コンフェッション』(02)から『グッドナイト&グッドラック』(05)、『かけひきは、恋のはじまり』(08)を経てこの『スーパー・チューズデー』(11)まで、3年ごとに監督作を発表していることになる。

筆者のサイトの方にアップしてあるジョージ・クルーニー論のタイトルは「優れたバランス感覚を備えたクレバーな映画人」だった。俳優としての演技の幅を着実に広げ、プロデューサーもやり、南スーダンへの支援などの人道的な活動も行いながら、定期的に監督業もこなすというのは、バランス感覚のあらわれなのかと思いたくなるところだが、実際にはそこまで計画的というわけではないようだ。

『スーパー・チューズデー』の企画は、2007年から製作の準備が開始され、2008年には撮影に入る予定だったが、タイミングが悪いということで延期することになった。プレスにはクルーニーのこんな説明がある。「ちょうどその頃にオバマが大統領に選出されて、アメリカ中が希望にあふれていた。誰もがハッピーで楽観的になっているときに、こういうシニカルな映画を撮るなんて間が悪すぎるよね。でも1年もしないうちに人々が再びシニカルになり始めたから、そろそろ製作を始めてもいい頃だと思ったんだ」

続きを読む