フローリア・シジスモンディ 『ランナウェイズ』レビュー

Review

壊れた家族とバンドという擬似家族の狭間で――もうひとつの『ブギーナイツ』

70年代に一世を風靡したガールズバンド“ランナウェイズ”を題材にしたこの映画で、まず注目すべきなのはサンフェルナンド・ヴァレーという舞台だろう。ロサンゼルスの郊外に広がるこの地域は、サバービアというテーマとも結びつきながら、映像作家の想像力を刺激し、アメリカのひとつの象徴として描かれてきた。

スティーヴン・スピルバーグは、『E.T.』をここで撮影した。ティム・バートンは『シザーハンズ』のプレスで「この映画は、ぼくの育った映画の都バーバンクの想い出がいっぱいつまっている」と語っているが、そのバーバンクもこの地域の縁にある。

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『ブローン・アパート』『サラエボ、希望の街角』『ランナウェイズ』試写

試写室日記

試写を3本観た。

『ブローン・アパート』 シャロン・マグアイア

チラシでは「欲望と心を引き裂く、愛と裏切りのサスペンス」という触れ込みになっているが、実際に観たらまったく違う印象を受けるはず。海外では賛否がはっきり分かれているようだが、否定派はテロ絡みのサスペンスか、ミシェル・ウィリアムズユアン・マクレガーのメロドラマを期待して落胆したのではないか。

筆者はすんなり入り込めた、というより引き込まれた。この映画の中心にあるのは、幼いわが子を亡くしたヒロインの喪の作業で、それにテロ事件の裏に潜む真実が影響を及ぼす(ビンラディンへの手紙=モノローグはない方がいいと思うが…)。テロのことを考えなければ、 『オール・アバウト・マイ・マザー』『心の羽根』『まぼろし』などに近い。ミシェル・ウィリアムズ、好きな女優だが、この映画でも存在感が際立っている。詳しいレビューは近いうちに。

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