チョン・ジェホン 『プンサンケ』 レビュー



Review

ギドクとジェホンは、分断の現実に強烈な揺さぶりをかける

キム・ギドクの凄さは、言葉に頼らず、内部と外部や可視と不可視の境界を示唆する象徴的な表現を駆使して独自の空間を構築し、贖罪や浄化、喪失の痛みや解放などを実に鮮やかに描き出してしまうところにあった。

そんな彼は『悲夢』の撮影中に起こった事故をきっかけに作品が撮れなくなり、久しぶりに発表した『アリラン』でも、自分自身にカメラを向けて喋りまくり、明らかに本質を見失っていた。

しかし、製作総指揮と脚本を手がけたこの『プンサンケ』では、本来のギドクが復活している。

“プンサンケ”とは、38度線を飛び越えて北と南を行き来し、離散家族の最後のメッセージを運ぶ正体不明の男の通称だ。そんな彼のもとに、亡命した北朝鮮元高官の愛人イノクをソウルに連れてくるという依頼が舞い込む。そして、警戒厳重な境界線を極限の状況に追い込まれながら突破していくうちに、ブンサンケとイノクの間には特別な感情が芽生え、彼らは分断という現実に翻弄されていくことになる。

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