『ミケランジェロの暗号』試写



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試写室日記

本日は試写を一本。

『ミケランジェロの暗号』 ウォルフガング・ムルンベルガー

アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『ヒトラーの贋札』を送り出した制作会社とプロデューサーが手がけた作品。プロダクション・ノートによると、プロデューサーのヨゼフ・アイヒホルツァーは、ポール・ヘンゲの脚本を渡されたとき、再びナチスを題材にした映画を作ることをためらったが、それだけの理由で素晴らしい物語を諦めるほうが間違っていると考え直したという。

この2作品には、単にナチスを題材にしているというだけではなく、もっと興味深い、というよりも重要な共通点がある。


『ヒトラーの贋札』では、ナチス・ドイツによる贋札事件「ベルンハルト作戦」が、強制的に従事させられたユダヤ系技術者の視点から描かれた。『ミケランジェロの暗号』では、ナチス・ドイツの命運を握るミケランジェロの絵をめぐる謎と暗闘が、絵を所有していたユダヤ系画商の息子の視点から描かれる。

筆者が注目したい共通点とは、必ずしもユダヤ人の視点ではない。重要なのは、紙幣や名画が果たす役割だ。贋札や贋作をめぐるドラマは、紙幣や名画の価値に支えられた世界やシステムそのものも侵食していく。そこには、ナチス・ドイツの時代だけではなく、現代世界の危うさを見ることができる。

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