『ミラノ、愛に生きる』 『ラビット・ホール』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ミラノ、愛に生きる』 ルカ・グァダニーノ

故デレク・ジャーマン作品のミューズ、『フィクサー』でアカデミー助演女優賞を獲得したティルダ・スウィントンが、主演だけではなく企画の段階から深く関わり、プロデュースも手がけている作品だが、これは素晴らしい。先日観た『灼熱の魂』も圧倒されたが、こちらはまた別の意味ですごい。引き込まれた。

Bunkamura ル・シネマのリニューアルオープニング作品ということで、ミラノの上流社会とかファッションとかメロドラマとか、それらしいカラーに染められた世界にはなっているが、まったく違った見方ができる。


カメラワークも面白いし、ジョン・アダムスの音楽も効いているが、最も際立つのはアイデンティティに対する独特の視点と表現だろう。国家、人種、階級、ジェンダー、料理、自然などの要素がキャラクターやドラマに巧妙に散りばめられ、コントラストを生み、ヒロインの覚醒を描き出す。ルカ・グァダニーノ監督、かなり鋭い感覚の持ち主と見た。細かいことはいずれ。(12月23日公開予定)

『ラビット・ホール』 ジョン・キャメロン・ミッチェル

こちらもニコール・キッドマンが主演だけではなくプロデュースも兼ねている作品。筆者が関心を持っているサバービアの映画であり、喪の映画でもある。ジョン・キャメロン・ミッチェルの演出は非常に細やか。筆者は、特にダイアン・ウィースト(昔から好きなので)と新人のマイルズ・テラー(イケメンとやらには出せない表情を持っている)が印象に残った。

ただ問題はカメラだ。特に前半が気になった。戯曲の映画化であれば、舞台とは違う映画ならではの一貫した方向性を考えたはずだが、固定の長回しにするでもなく、手持ちで肉薄するでもなく、切り返しなども安易に繋いでいる感じがした。(11月5日公開予定)

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