ルカ・グァダニーノ 『ミラノ、愛に生きる』 レビュー

Review

グローバリゼーションに呑み込まれていく一族、自然のなかで心と身体を解き放つヒロイン

繊維業で成功を収めた富豪のレッキ一族に嫁ぎ、成人した三人の子供の母親として何不自由ない生活を送るエンマ。そんなヒロインが、息子の友人と恋に落ち、本当の自分に目覚めていく。ルカ・グァダニーノ監督のイタリア映画『ミラノ、愛に生きる』は、表面的にはメロドラマだが、そのありがちな展開のなかで社会の変化や個人のアイデンティティが実に巧妙に掘り下げられていく。

物語は雪化粧した冬のミラノ、エンマの義父である一族の家長の誕生日を祝うパーティの場面から始まる。そこに漂う格式ばった雰囲気は、一族の揺るぎない秩序を象徴している。だが、家族のやりとりには変化の兆しが見える。しかもその兆しは、かすかな不協和音を響かせている。

続きを読む

『ミラノ、愛に生きる』にはワリス・アルワリアも出ている

トピックス

ターバンがトレードマークのあの男がイタリア映画にも登場

『ミラノ、愛に生きる』のルカ・グァダニーノ監督への質問リストを作っているときに、この映画についてブログに書こうと思っていたのに忘れていたことを思い出した。映画ファンのなかには、ワリス・アルワリアという人物が気になっている人もいるのではないか。ウェス・アンダーソン監督の『ダージリン急行』で主任客室乗務員に扮していた人物。

最も印象に残るのはやはりスパイク・リーの『インサイド・マン』で刑事たちの尋問を受ける男ヴィクラム・ワリア役か↓。

続きを読む

『ミラノ、愛に生きる』 『ラビット・ホール』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ミラノ、愛に生きる』 ルカ・グァダニーノ

故デレク・ジャーマン作品のミューズ、『フィクサー』でアカデミー助演女優賞を獲得したティルダ・スウィントンが、主演だけではなく企画の段階から深く関わり、プロデュースも手がけている作品だが、これは素晴らしい。先日観た『灼熱の魂』も圧倒されたが、こちらはまた別の意味ですごい。引き込まれた。

Bunkamura ル・シネマのリニューアルオープニング作品ということで、ミラノの上流社会とかファッションとかメロドラマとか、それらしいカラーに染められた世界にはなっているが、まったく違った見方ができる。

続きを読む