『建築学概論』 『三姉妹~雲南の子』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『建築学概論』 イ・ヨンジュ

韓国で恋愛映画初の400万人超の大ヒットを記録したという話題作。かつて初恋の痛みを分かち合った男女が、15年後に再会し、欠けていたピースを埋めて過去に決別を告げる。過去のふたりをイ・ジェフンとスジが、現在のふたりをオム・テウンとハン・ガインが演じている。

“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”で公開されるミア・ハンセン=ラブ監督の『グッバイ・ファーストラブ』(近くレビューをアップする予定)と比べてみても面白いかもしれない。どちらも初恋を題材にしていて、再会が描かれるだけではなく、そこに建築という異質な要素が絡んでくるからだ。

『建築学概論』は韓国ではリピーターが多かったようだが、それもわかる気がする。最初に観るときには、男女双方の複雑な感情を際立たせていく建築の要素が徐々に明確になるが、それをわかっていてみるとまた印象が変わるはず。

たとえばこの物語には、かつて交わされた彼女の家を建てるという約束が、15年後に果たされるという展開があるが、建築学科に通う大学1年の彼が思い描いた家と、建築士となった彼が実際に建てる家の距離からは、痛みや切ない感情を読み取ることができる。詳しいことはいずれレビューで。

『三姉妹~雲南の子』 ワン・ビン

前作『無言歌』で劇映画に挑戦したワン・ビン(王兵)監督が、ドキュメンタリーのフィールドに戻って作り上げた待望の新作。中国国内で最も貧しいといわれる雲南省の高地(標高3200m)にある村、そこに暮らす10歳、6歳、4歳の三姉妹の過酷な生活が映し出される。

この映画の世界は、観る者の想像力しだいでいかようにも広がり、深くなっていく。

もちろん、中央によって作られた歴史に埋もれた過去の事実を掘り起こし、生々しく現前させる『無言歌』に対して、この新作は、辺境であるがゆえに著しい経済成長というイメージに覆い隠されてしまったもうひとつの中国を炙り出す作品と位置づけることができる。

「西部大開発」や「生態移民」といった政策、あるいは「一人っ子政策」と関連づけてみることもできる。しかし、そういう次元にあっさりとおさまってしまう作品ではない。

三姉妹の生の営みと彼女たちを取り巻く世界をとらえる透徹した眼差しは、筆者が特別な愛着を持つレイモン・ドゥパルドン監督の『モダン・ライフ』、あるいはそれを含む“農民の横顔”三部作を髣髴させる。

いや、髣髴させるどころかその世界を突き抜けて、ヒトの出発点へと時間を遡っていくといっても過言ではない。プレスに収められたワン監督の「私たちは、彼らの原初的な生活を目撃します」の“原初的”という言葉は、たとえば、アレクサンドラ・マリヤンスキーの『社会という檻』やジャレド・ダイアモンドの『人間はどこまでチンパンジーか?』などの視点に結びつけられるが、くわしいことはまたレビューで。