ワン・ビン 『三姉妹~雲南の子』 レビュー



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劣悪な環境にも適応していく、野生的ともいえる生命力

世界の注目を集める中国の鬼才ワン・ビン監督のドキュメンタリー『三姉妹~雲南の子』では、中国国内でも最も貧しいといわれる雲南省の高地(標高3200m)にある村に暮らす10歳、6歳、4歳の三姉妹の過酷な生活が映し出される。母親はだいぶ前に家族を捨て、父親は遠方の町に出稼ぎに行っている。

この作品と4月に公開された新鋭ベン・ザイトリン監督の『ハッシュパピー バスタブ島の少女』には注目すべき共通点がある。後者は温暖化による海面上昇の影響をもろにうける南ルイジアナの低地を舞台に、ハリケーン・カトリーナの悲劇や格差による貧困といった現実を反映したファンタジーだ。

どちらの映画も苦境に追いやられた少女の姿から、政治や社会に対する批判的なメッセージを読み取れないことはない。繁栄の裏にある厳しい現実が浮き彫りにされているからだ。

だが、二人の監督の関心は明らかに別のところにある。彼らが見つめるのは、いかに劣悪な環境であっても、それに適応していく野生的ともいえる生命力だ。

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『建築学概論』 『三姉妹~雲南の子』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『建築学概論』 イ・ヨンジュ

韓国で恋愛映画初の400万人超の大ヒットを記録したという話題作。かつて初恋の痛みを分かち合った男女が、15年後に再会し、欠けていたピースを埋めて過去に決別を告げる。過去のふたりをイ・ジェフンとスジが、現在のふたりをオム・テウンとハン・ガインが演じている。

“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”で公開されるミア・ハンセン=ラブ監督の『グッバイ・ファーストラブ』(近くレビューをアップする予定)と比べてみても面白いかもしれない。どちらも初恋を題材にしていて、再会が描かれるだけではなく、そこに建築という異質な要素が絡んでくるからだ。

『建築学概論』は韓国ではリピーターが多かったようだが、それもわかる気がする。最初に観るときには、男女双方の複雑な感情を際立たせていく建築の要素が徐々に明確になるが、それをわかっていてみるとまた印象が変わるはず。

たとえばこの物語には、かつて交わされた彼女の家を建てるという約束が、15年後に果たされるという展開があるが、建築学科に通う大学1年の彼が思い描いた家と、建築士となった彼が実際に建てる家の距離からは、痛みや切ない感情を読み取ることができる。詳しいことはいずれレビューで。

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ワン・ビン 『無言歌』 レビュー



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過去を振り返る視点を排除し死者たちの声なき声を拾い上げる

世界の注目を集める中国の鬼才ワン・ビン監督の日本初公開作品『無言歌』は、ドキュメンタリーで才能を開花させた彼にとって初の劇映画となる。その題材は、文革の嵐が吹き荒れる前に起きた「反右派闘争」の悲劇だ。

毛沢東は56年に党批判を歓迎する運動を推進した後、57年に方針を転換し、苛烈な粛清を開始した。そして、党批判や家族の出自によって「右派」とされた者たちは、辺境での過酷な労働、そして激烈な飢餓との闘いを強いられることになった。

この悲劇には、現代中国の政治体制の原点を見ることができるが、ワン監督のアプローチはそんなことを考える余裕を与えない。

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