『野蛮なやつら/SAVAGES』 映画.com レビュー & ノーマン・メイラー

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グローバリゼーションの時代の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』

「映画.com」の本日(2月19日)更新の映画評枠で、上記のようなタイトルで、オリヴァー・ストーン監督の新作『野蛮なやつら/SAVAGES』のレビューを書いています。『野蛮なやつら/SAVAGES』試写室日記でも触れたように、この映画を観て筆者がまず連想したのは『ナチュラル・ボーン・キラーズ』と作家のノーマン・メイラーが“ヒップスター”について書いたテキストのことだったので、レビューもそういう切り口になっています。

『90年代アメリカ映画100』で筆者が担当した『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のテキストをお読みになっている方は、よりわかりやすいかと思います。

ノーマン・メイラー(1923-2007)をご存じない方のために少し解説を。彼は、アメリカという巨大なサーカスのテントのなかで、自らスリリングな綱渡りを演じることによって、時代を劇的に映し出すトリックスターのような存在だった。


1948年に『裸者と死者』で文壇にデビューしたメイラーは、59年に発表した彼のマニフェストともいえる作品『ぼく自身のための広告』(山西英一訳/新潮社刊)のなかで、そんな姿勢をこのように表現している。

ぼく自身について書くことは、自分のスタイルにさまざまの変化と気取ったポーズのサーカスを演じさせ、なにか達成するための――なにを達成するのか、ぼく自身にもわかっていないのだ――美技妙芸の花火を打ちあげさせることである。ぼくは、まるでスタイルを切りかえる行為で真理の王子さまをつかまえることができるとでも信じているように、役者になり、早変わりの芸人になるのだ、とだけいっておこう

そして、その言葉どおり、彼は、政治、宗教、セックス、テクノロジーなど多岐に渡るテーマで同時代のアメリカ社会と深くかかわり、現実の出来事に介入し、劇的にスタイルや文体を変え、『アメリカの夢』、『なぜぼくらはベトナムに行くのか?』、『夜の軍隊』、『月にともる火』、『性の囚人』、『マリリン』、『死刑執行人の歌』といった意欲作を発表し、全米図書賞、二度のピューリッツァ賞に輝いた。

また、作家としての活動以外でも、ニューヨーク市長選への立候補や問題発言によるマスコミとのいざこざ、テレビのショーでプロボクサーとスパーリングを演じたり、酔っぱらってタクシーと間違えてパトカーをとめてしまい、警官と格闘して裁判沙汰になったり、妻をペンナイフで刺してしまったり、六度の結婚を経験したりと、注目を集めた。

メイラーは野蛮人を肯定し、野蛮に生きた作家といえる。ということも踏まえ、「映画.com」の『野蛮なやつら/SAVAGES』レビューをお読みください。