アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 『BIUTIFUL』 レビュー

Review

複数の境界が交差する場所に立つ男、その孤独な魂の震え

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの新作『BIUTIFUL』は、表現や構成がこれまでの監督作とは違う。複数の物語を断片化し、再構築するようなスタイルは見られない(『アモーレス・ペロス』『21グラム』、イニャリトゥとコンビを組んでいたギジェルモ・アリアガ『あの日、欲望の大地で』のレビューをお読みいただければ、筆者がこれまでの彼のスタイルに好感を持っていなかったことがおわかりいただけるだろう)。

主人公はスペインの大都市バルセロナの底辺で生きる男ウスバル。妻と別れ、男手ひとつで二人の子供を育てている彼がある日、末期がんで余命2ヶ月と宣告される。

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『多言語国家スペインの社会動態を読み解く』 竹中克行



Reading

映画『BIUTIFUL ビューティフル』の背景に関心がある人に

一昨年だったと思うが、近所の図書館の新刊コーナーに並んでいるのを見かけて読んだ本。

内容はこんな感じ。「スペイン各地の言語や文化を背負って移動する人々の役割に注目しながら、地域間に存在する格差が人口移動を媒介としてホスト社会の中に織り込まれ、新たな格差の構造となって立ち現れるプロセスを解き明かすこと、それが本書の中核をなす目標である」(「はしがき」より引用)

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『BIUTIFUL ビューティフル』試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『BIUTIFUL ビューティフル』 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

『アモーレス・ペロス』『21g [21グラム]』のレビュー、あるいはイニャリトゥとコンビを組んでいた脚本家ギジェルモ・アリアガの監督作『あの日、欲望の大地で』のレビューで書いてきたように、複数の物語を断片化し、時間軸を操作し、再構成するようなイニャリトゥのスタイルにはずっと違和感を覚えてきた。

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