『マネーボール』 『永遠の僕たち』 試写



  • このエントリーをはてなブックマークに追加
試写室日記

本日は試写を2本。

『マネーボール』 ベネット・ミラー

貧乏球団アスレチックスを常勝軍団に作り変えた男ビリー・ビーンをブラッド・ピットが演じる。監督のベネット・ミラーは『カポーティ』につづいて実在の人物を描くことになる。そのミラーの人物に対する鋭い洞察は『カポーティ』でも際立っていたが、新作でもフラッシュバックを交えながら、主人公の複雑な内面に迫っていく。

そんな監督のスタンスと、『ジェシー・ジェームズの暗殺』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』、『ツリー・オブ・ライフ』などで磨きがかかったブラッド・ピットの眼差しや表情のパフォーマンスが素晴らしくマッチしている。スポーツを題材にした映画でありながら、フィールドの熱狂とは違うところでしっかり見せる。冒頭からグイグイ引き込まれた。


ちなみに、不満とまではいかないが、アスレチックスの監督役にフィリップ・シーモア・ホフマンを起用したのはどうかと思う。演技力を発揮しようのない役柄なので、ちょっと気の毒だった。

『永遠の僕たち』 ガス・ヴァン・サント

加瀬亮が出演していることもあって以前から話題になっていた作品だが、ヴァン・サントに完全にやられた。

『小説家を見つけたら』『ミルク』のレビューで書いたように、ヴァン・サントの作品では、しばしば『オズの魔法使』のシチュエーションが様々に応用され、“魔法の国”にあたる空間と現実の世界の狭間でドラマが生み出されてきた。しかしこの映画では、「いま」「ここ」の空間に両方が存在していて、瞬時に切り換わっていく。

そこは現実の世界であると同時に魔法の国でもある。その空間を作っているのは、ヘンリー・ホッパー(故デニス・ホッパーの愛息)とミア・ワシコウスカであり、どちらが欠けても消え去ってしまう。ヴァン・サントは、二人からそんな空間に相応しい瑞々しく儚げな表情を引き出している。

●amazon.co.jpへ