『New History Warfare Vol.2: Judges』 by Colin Stetson

Listning

リード楽器と身体を極限まで駆使する圧巻のひとりオーケストラ

コリン・ステットソン(Colin Stetson)というリード奏者の名前は知らなくても、彼が生み出す音に触れている人は少なくないはずだ。たとえば、トム・ウェイツ(Tom Waits)の『Alice』や『Blood Money』、『Orphans』とか、Arcade Fireの『Neon Bible』や『The Suburbs』、TV On the Radioの『Return to Cookie Mountain』や『Dear Science』、Yeasayerの『Odd Blood』、そしてBon Iverのニューアルバム『Bon Iver, Bon Iver』(11)にも。

ステットソンがどんな音を出しているのか、とりあえず彼のサックスがフィーチャーされたArcade Fireのショート・フィルムの予告編でも見てみますか。監督はスパイク・ジョーンズです。

でもステットソンが本領を発揮するのはやはりソロでしょう。でかくて重いバス・サックスと一体化した超絶技巧をご覧あれ。

Colin Stetson | Awake on Foreign Shores & Judges | A Take Away Show from La Blogotheque on Vimeo.

テープとかループを使っているわけではない。循環呼吸、キーでリズムを生み出す指使い、ヴォーカリゼーション、過剰なブロウや残響、楽器の特性と身体を駆使してユニークな音楽が生み出される。ミニマル・ミュージックのようでもあり、アルバート・アイラーのようでもある。

Colin Stetson | Red Horse (Judge II) & In love and in Justice | A Take Away Show from La Blogotheque on Vimeo.

ちなみにこのステットソンの演奏は、フランスのサイトLa Blogothequeが制作している“A Take Away Show”というプログラムのひとつだが、コンセプトも映像もしっかりしていて見応えがある。ここのプログラムはどれもレベルが高い。特に、こういう全身を駆使する演奏は撮影も難しい。実際、YouTubeには、同じ曲の演奏でもかなりお粗末な映像がある。

このプログラムでステットソンが演奏している<Awake on foreign shores><Judges><Red Horse (Judges II)><In love and in justice>の4曲は、『New History of Warfare, Vol. 1』(08)につづく新作『New History Warfare Vol. 2: Judges』(11)に収められている。ゲストは、ローリー・アンダーソンとシャラ・ウォーデン。あの映像を見てしまったら聴きたくなるはず。

New History Warfare Vol. 2: Judges – COLIN STETSON by Constellation Records

●amazon.co.jpへ