『Those Who Didn’t Run』 by Colin Stetson

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息を呑む超絶技巧に磨きをかけ、トランスの世界を切り拓く

以前はコリン・ステットソンについて書くのに、トム・ウェイツやArcade FireやBon Iverのアルバムやツアーに参加しているサックス奏者のような前置きをしなければならなかったが、このブログでも取り上げたアルバム『New History Warfare Vol. 2: Judges』(11)がVol.1以上に大きな評判になって、どうやらその必要もなくなったようだ。

vimeoやYouTubeに演奏の映像が出たことも大きかったのだろう。なにも知らずにステットソンのアルバムを聴いたら、エフェクターかテープかオーバーダブかなにかで音を作っていると思ってしまうはずだから。ちなみにステットソンの超絶技巧を知らずにこのページに来てしまった方は、ひとまず『New History Warfare Vol. 2: Judges』←こちらに貼ったvimeoの演奏をご覧になってから戻ってきてください。

"Those Who Didn't Run" by Colin Stetson

で、『New History Warfare Vol. 2: Judges』につづくEP『Those Who Didn’t Run』が出た。これがまたいい、明らかに進化していて。

Those Who Didn’t Run E.P. – COLIN STETSON by Constellation Records

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『New History Warfare Vol.2: Judges』 by Colin Stetson

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リード楽器と身体を極限まで駆使する圧巻のひとりオーケストラ

コリン・ステットソン(Colin Stetson)というリード奏者の名前は知らなくても、彼が生み出す音に触れている人は少なくないはずだ。たとえば、トム・ウェイツ(Tom Waits)の『Alice』や『Blood Money』、『Orphans』とか、Arcade Fireの『Neon Bible』や『The Suburbs』、TV On the Radioの『Return to Cookie Mountain』や『Dear Science』、Yeasayerの『Odd Blood』、そしてBon Iverのニューアルバム『Bon Iver, Bon Iver』(11)にも。

ステットソンがどんな音を出しているのか、とりあえず彼のサックスがフィーチャーされたArcade Fireのショート・フィルムの予告編でも見てみますか。監督はスパイク・ジョーンズです。

でもステットソンが本領を発揮するのはやはりソロでしょう。でかくて重いバス・サックスと一体化した超絶技巧をご覧あれ。

Colin Stetson | Awake on Foreign Shores & Judges | A Take Away Show from La Blogotheque on Vimeo.

テープとかループを使っているわけではない。循環呼吸、キーでリズムを生み出す指使い、ヴォーカリゼーション、過剰なブロウや残響、楽器の特性と身体を駆使してユニークな音楽が生み出される。ミニマル・ミュージックのようでもあり、アルバート・アイラーのようでもある。

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