一尾直樹 『心中天使』レビュー



Review

携帯やネットが生み出す形而上学的変異によって人と人の繋がりや世界はどう変わるのか

『心中天使』(10)は、一尾直樹監督にとって劇場デビュー作『溺れる人』(00)に続く2作目の長編劇映画となる。

名古屋を拠点に活動する一尾監督の作品には共通点がある。まず、地域性が前面に出てくることがない。ドラマの背景になるのは、均質化した社会の日常だ。そしてもうひとつ、平凡な日常のなかに、常識的にはあり得ないと思えるようなことが起こる。

続きを読む

『アンチクライスト』『トスカーナの贋作』試写

試写室日記

試写を2本観た。

『アンチクライスト』 ラース・フォン・トリアー

試写室で河原晶子さんにお会いする。河原さんは2度目だそうだ。

すごい映画だった。「死」→「喪」→「森」→「動物と人間」→「pain」→「nature」→「genocide」と、筆者が強い関心を持っている要素が、すさまじい映像の力で次々と押し寄せてきて、心の準備もできないままに心拍数が上がり、最後は異様な興奮状態に陥っていた。こういう体験ができる映画はめったにない。本当に病んでないとこういう映画は撮れないだろう。

続きを読む