『演劇1』 『演劇2』 (観察映画 第3弾・第4弾) 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『演劇1』『演劇2』 想田和弘

“観察映画”という独自の発想とスタイルでドキュメンタリーに新風を吹き込み、注目を集めている想田和弘監督の待望の新作。題材は、平田オリザと青年団。今回はなんと1本ではなく2部作(しかも上映時間がそれぞれ2時間52分と2時間50分)として完成。

想田監督はこれまでに『選挙』『精神』『Peace』という3本の観察映画を発表しているが、『Peace』が観察映画番外編という位置づけだったので、今回の2部作が第3弾と第4弾ということになる。

この新作にはこれまでの作品とは異なる点がいくつかあるが、ここではそのひとつに触れておこう。観察映画では、想田監督は撮影をする前にリサーチをしない。先入観に縛られることなく、まずは観察に徹し、テーマのようなものは後から見えてくることになる。たとえば『精神』のレビューを読んでいただければ、そこらへんのところがよくわかると思う。

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ラース・フォン・トリアー 『メランコリア』 レビュー

Review

人間の在り方を原点から問い直す――鬼才トリアーの世界

ラース・フォン・トリアー監督の前作『アンチクライスト』は、うつ病を患ったフォン・トリアーがリハビリとして台本を書き、撮影した作品だった。新作の『メランコリア』も、「うつ病」の意味もある言葉をタイトルにしているように、彼のうつ病の体験と深く結びついている。

この映画は二部構成で、ジャスティンとクレアという姉妹の世界が対置されている。ジャスティンは心の病ゆえにこれまで姉のクレアに迷惑をかけてきたと思われる。そんな彼女は結婚を節目に新たな人生を歩み出そうとするが、パーティーの最中にうつ状態に陥り、夫も仕事も失ってしまう。

しかし、世界の終わりが現実味を帯びていく第二部では、二人の立場が逆転する。失うもののないジャスティンは落ち着きを取り戻し、家族がいるクレアは逆に取り乱し、自分を見失いかける。

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今週末公開オススメ映画リスト2012/02/16

週刊オススメ映画リスト

今回は『昼下がり、ローマの恋』、『ザ・トーナメント』、『メランコリア』、『汽車はふたたび故郷へ』、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』、『おとなのけんか』(順不同)の6本です。軽妙な恋愛オムニバス、意外な掘り出し物から、世界の終わりや9・11以後、ディアスポラ体験までいろいろと。

『昼下がり、ローマの恋』 ジョヴァンニ・ヴェロネージ

世代が異なる三組の男女の恋愛を軽妙なタッチで描いたオムニバス。注目度が高いのは、ロバート・デ・ニーロとモニカ・ベルッチが共演している三本目だろう。確かにそれも悪くはないのだが、個人的には一本目と二本目のひねりが巧みで、かなり楽しめたので、リストに加えることにした。

若気の至りを描く一本目。ローマに暮らし、恋人サラと結婚するつもりの野心的な青年弁護士ロベルトが、農場の立ち退き交渉を命じられ、トスカーナの田舎町に出張するが、そこで出会ったゴージャスな美女ミコルに心を奪われ、骨抜きになってしまう。

この話の面白さは、たとえば(ちょっと古くて恐縮だが)ピエラッチョーニの『踊れトスカーナ!』を思い出してもらえばわかりやすい。そこに描かれているように、普通はどうしようもなく退屈なトスカーナの田舎町に、外部から日常を忘れさせるような美女がやってきてというのが基本形だが、このエピソードはその図式をひっくり返して、退屈なはずの田舎町の方になぜか自由奔放な謎の美女がいる。

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『メランコリア』 劇場用パンフレット



News

鬼才ラース・フォン・トリアー最新作!2月17日(金)ロードショー

『奇跡の海』や『ダンサー・イン・ザ・ダーク』にも心を激しく揺さぶられたが、フォン・トリアーがうつ病を体験してから作り上げた『アンチクライスト』と『メランコリア』には、単に心の病とみなされるだけのものではなく、渡辺哲夫が“生命の輝きそのもののような狂気”と表現するものに匹敵するような、これまでと異なる次元から人間と世界を見切っているような凄みがある。

『メランコリア』の劇場用パンフレットに「人間の在り方を原点から問い直す――鬼才トリアーの世界」というタイトルで作品評を書いております。筆者がいま関心を持っていることのど真ん中にくるような作品で、深く深く引き込まれました。『メランコリア』の試写室日記もお読みください。いろいろ参考になるかと思います。

キャストも素晴らしいです。特に女優陣。キルスティン・ダンストとシャルロット・ゲンズブールが対極の世界観を見事に体現しているうえに、シャーロット・ランプリングが少ない出番のなかで強烈な存在感を放っています。

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『メランコリア』試写



試写室日記

本日は試写を1本。

『メランコリア』 ラース・フォン・トリアー

前作『アンチクライスト』を観たときに、これはフォン・トリアーが心を病んだからこそ切り拓くことができたヴィジョンだと強く感じた。前にも引用したと思うが、渡辺哲夫の『祝祭性と狂気 故郷なき郷愁のゆくえ』には以下のような記述がある。

たとえば現代精神医学も、その解くべき封印の一つではないだろうか。絶え難い苦痛、絶望などが症状であるならば、もちろん治療という形で病気を封印すべきと思うが、生命の輝きそのもののような狂気もあり、これは本来、悲惨不毛なだけの病気でないにもかかわらず、これをも精神科医療の名のもとに封印してしまうことが少なくない

フォン・トリアーは「生命の輝きそのもののような狂気」を封印することなく、『アンチクライスト』を作った。

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