ポン・ジュノ 『スノーピアサー』 レビュー

Review

テクノロジーに依存した閉ざされた世界がたどり着く場所

韓国の異才ポン・ジュノは、『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』『母なる証明』といった作品で、実際の連続殺人事件や突然変異で生まれた怪物の背後に北の脅威や軍事政権、韓米同盟などを見据え、巧妙に映し出してきた。

この監督のそんな洞察力や想像力は、海外の大舞台でも通用するのか。フランスのコミックを大胆に脚色し、国際的な豪華キャストを起用した新作『スノーピアサー』にその答えがある。

地球温暖化を防ぐために化学薬品が撒かれた結果、新たな氷河期に突入した地球では、大企業が製造し、大陸を結んで走り続ける列車“スノーピアサー”だけが、残された人類の唯一の生存場所となっている。

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『裏切りのサーカス』 『ファウスト』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。まったく異なる意味でどちらも重量級といえる作品で、非常に見応えがあった。

『裏切りのサーカス』 トーマス・アルフレッドソン

スパイ小説の大御所ジョン・ル・カレが74年に発表した『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の映画化。東西冷戦がつづく1970年代前半、英国諜報部<サーカス>上層部に潜むソ連の二重スパイ“もぐら”の正体をめぐって、<サーカス>と<KGB>の熾烈な情報戦が繰り広げられる。

本物のスパイは、銃撃戦やカーチェイスなどを繰り広げたりせず、人ごみに紛れ、物影にひそみ、緊張や孤独に耐え、静かに神経をすり減らしていく。「007」のように、舞台や人物がエキゾティシズムを漂わせることもない。

“もぐら”の正体を暴くという極秘任務を託されたジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマンの抑えた演技が実に渋い)を中心に、登場人物たちが複雑に入り組むため、公式サイトに「必読」のコーナーが準備され、鑑賞前に最低限の設定を頭に入れていくことを勧めている。

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