『ジャンゴ 繋がれざる者』 試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『ジャンゴ 繋がれざる者』 クエンティン・タランティーノ

新年早々だったと思うが、「Village Voice」に「クエンティン・タランティーノを守る方法」という記事があった。その中身はこんな感じだ。タランティーノは新作を作るたびに、悪くいえば“剽窃者”、よくいえば“中身のないポストモダニスト”、要するにパクリばかりで、本質がないと批判される。だから彼を弁護しなければならない。

ということで、まず『荒野の用心棒』に注目する。この映画は黒澤の『用心棒』のパクリだったのに、カメラワークや音楽やイーストウッドのパフォーマンスが評価されている。タランティーノの場合は単なるパクリではなく、ストーリーもキャラクターも彼にしか生み出せないもので…というように展開していく。

その論点はわからないではないが、出発点の部分で中身のないポストモダニストという形容を単に否定的なものとしてとらえてしまうところに根本的な問題がありそうだ。この世には間違いなく中身のないポストモダンの世界があって、タランティーノは喜んでそれを受け入れ、独自の感性を培った。

続きを読む

『70年代アメリカ映画100』ついに完成!



News

失意の闇に隆起した映画史最大の革命期

遅ればせながら告知を。「アメリカ映画100」シリーズの新刊『70年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)が出ました。

コラムと対談の執筆者は以下の方々です。アレックス・コックス、町山智浩、粉川哲夫、生井英考、川本三郎、滝本誠、高崎俊夫、大森さわこ、河原晶子、鈴木慶一、北沢夏音。

編集は渡部幻[主編]、佐野亨[編]のおふたり。私は今回は編集に関わってないので本の方向性などについて語る立場にはありませんが、文字量ということではシリーズのなかで一番たくさん書かせていただきました。

70american.film

続きを読む

『ゼロ・ダーク・サーティ』 試写

試写室日記

本日は試写を1本。

本当はエマヌエーレ・クリアレーゼ監督の『海と大陸』との2本立ての予定で家を出たのだが、駅に着いたらいくつか先の駅で発生した人身事故のせいで電車が止まっていた。乗車したまましばらく待っていたが、すぐには動きそうにないので1本目は諦めることにした。

こういう観ようと思ったときに観られなかった作品は往々にして最後まで試写に行けなかったりする。ちなみに逃したのはこういう↓映画だ。

『ゼロ・ダーク・サーティ』 キャスリン・ビグロー

ビンラディン殺害に至る軌跡を描いたキャスリン・ビグローの新作。プレスの[PRODUCTION NOTES]によれば、ビグローと脚本家のマーク・ボールは、2006年に、トラボラで失敗したビンラディン捕縛作戦についての映画を企画していたという。その後、彼らは『ハート・ロッカー』を完成させ、2011年に新作の製作に入ったが、5月1日にビンラディンが殺害されたためにその企画はボツになり、一からやり直すことになった。

このトラボラの捕縛作戦に対してビグローとボールがどんな関心を持っていたのかというのも気になる。かなり興味深い題材だと思う。アメリカは圧倒的な空軍力でタリバンを叩き、トラボラでビンラディンは袋のねずみ同然になっていた。ところがなぜか大規模な地上軍の投入は見送られ、みすみす取り逃がすことになった。

続きを読む

アスガー・レス 『崖っぷちの男』 レビュー

Review

先読みできないサスペンスにユーモアを交えて描く
痛快 “交渉人” 映画

アスガー・レス監督の『崖っぷちの男』は、冒頭からいきなり私たちを緊張感と臨場感が際立つ状況に引き込む。ルーズヴェルト・ホテルにウォーカーと名乗ってチェックインした男が、部屋の窓から壁面の縁に降り立つ。男の存在に気づいた通行人は、自殺志願者に違いないと思い、足を止めて騒ぎ出す。マスコミが駆けつけ、警察が道路を封鎖する。

しかし、私たち観客には、男が自殺しようとしているのではないことがわかってくる。シンシン刑務所に服役していた主人公ニック・キャシディは、元相棒の刑事の計らいで父親の葬儀に参列したあと、見張りの警官の隙を突いて逃走する。それは偶発的な出来事のように見えるが、間もなくそうではないことが明らかになる。追跡を振り切ったニックがたどり着いた倉庫には、クレジットカードや現金などが用意されていたからだ。

続きを読む

『マーサ、あるいはマーシー・メイ』 『フライト』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『マーサ、あるいはマーシー・メイ』 ショーン・ダーキン

アメリカの新鋭ショーン・ダーキンの長編デビュー作。カルト集団から脱走し、湖畔の別荘で休暇を過ごす姉夫婦と暮らすことになった若い女性マーサ。だが、マーシー・メイという名前で過ごしたカルトでの体験がよみがえり、次第に過去と現在、現実と幻想の境界が曖昧になっていく。

この作品については、観る前から自分の好みの映画だという確信があった。それは題材に興味があったからということではない。製作総指揮にテッド・ホープの名前があったからだ。彼は筆者が絶対的な信頼を寄せるプロデューサーで、実際この作品でも彼の“目利き”に間違いはなかった。

↓予告編の次に貼ったのは2011年のサンダンス映画祭におけるこの映画のスタッフ・キャストの会見を収めたものだが、司会進行を務めるメガネのおじさんがテッド・ホープだ。彼が頭角を現した頃には、手がけた作品を取り上げるたびに彼のこともプッシュしていたが、最近はあまり触れていなかったので、ここで少し振り返っておくのも悪くないだろう。

続きを読む