『ハッシュパピー バスタブ島の少女』 『天使の分け前』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ハッシュパピー バスタブ島の少女』 ベン・ザイトリン

『君と歩く世界』試写室日記に書いたような事情で、この映画もほとんど予備知識なしに試写に出向いた。監督が無名の新人で、少女の物語で、本年度のアカデミー賞の主要4部門にノミネートされたということくらいか。巨大な野獣と小さな少女が向き合っている写真にはちょっと興味をそそられていた。

映画を観ながら、ニューオーリンズから遠くないであろう、どことも特定されないバイユーを舞台にしていて、ハリケーン・カトリーナや石油の流出事故などが意識された物語であることがわかる。このブログでも様々なかたちで取り上げているようにニューオーリンズやカトリーナについては非常に興味があるので、引き込まれる。

最初に連想したのはハーモニー・コリンの『ガンモ』。『ガンモ』が、竜巻の襲撃から立ち直れず、貧困にあえぐ人々の営みを描いていて、この映画の場合には、ハリケーンや地盤沈下で人々が追い詰められていくということだけではない。『ガンモ』が中西部に設定されていながら、実はコリンが育ったナッシュヴィル郊外のホワイトトラッシュの町で撮影され、コリンのなかにある南部的な感性がそこに吐き出されていたように、この映画でも南部の文化が独特の空気をかもし出している。

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『The Rip Tide』 by Beirut and 『Bombay Beach』 by Alma Har’el

Listning

訪れたことのない場所から過去や記憶のなかの場所へ

BeirutのフロントマンであるZack Condonが生み出す音楽と場所との関係は非常に興味深い。彼はニューメキシコのサンタフェで育ったが、これまでBeirutの音楽と彼のバックグラウンドに直接的な結びつきはほとんど見出せなかった。

Condonはバルカン・ブラスにインスパイアされて、Beirutのデビューアルバム『Gulag Orkestar』(2006)を作った。しかし、彼自身がバルカンを訪れ、音楽に接したわけではない。

『Gulag Orkestar』 (2006)

きっかけは、カレッジをやめてヨーロッパに行き、アムステルダムのアパートで従兄弟と暮らしていたときに、上階に住むセルビア人のアーティストがバルカン・ブラスのアルバムをがんがんかけていたことだった。

しかしCondonは、単にバルカン・ブラスに影響されてアルバムを作ったというわけではない。彼はよくインタビューで、自分が訪れたり、住んだりしたことのない「場所」により影響されることがあると語っているし、そういう指摘もされている。

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