『ザ・イースト』 『ダラス・バイヤーズクラブ』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ザ・イースト』 ザル・バトマングリ

主演から脚本・製作までこなす才女ブリット・マーリングと新鋭ザル・バトマングリ監督のコラボレーション第2弾。いまハリウッドで注目を集める彼らが選んだ題材はエコテロリズム。

マーリングが演じるのは、テロ活動からクライアント企業を守る調査会社に採用された元FBIエージェントのジェーン。サラと名前を変え、正体不明の環境テロリスト集団<イースト>に潜入した彼女は、大企業の不正や被害者の実情を知るうちに、彼らの信念に共感を抱くようになるが…。

キャストは、<イースト>のリーダー、ベンジーにアレクサンダー・スカルスガルド、<イースト>の重要メンバー、イジーにエレン・ペイジ、調査会社の代表シャロンにパトリシア・クラークソンという顔ぶれ。


FOXサーチライト20周年記念第2弾作品ということでそれなりに期待はしていたが、社会や企業をとらえる鋭い視点と伏線を散りばめた緻密な構成にうなった。どこかで取り上げると思うので詳しくは書かないが、大企業と環境テロリストの攻防という単純な図式に回収されてしまうようなドラマではない。

『ダラス・バイヤーズクラブ』 ジャン=マルク・ヴァレ

ロン・ウッドルーフの実話にもとづく作品。1985年のテキサス、HIV陽性で余命30日と宣告されたカウボーイのロンが、未承認エイズ治療薬の密売組織「ダラス・バイヤーズクラブ」を立ち上げ、エイズ患者たちの希望の星となっていく。

素晴らしい。21キロも減量してロンに扮したマシュー・マコノヒー、同じく減量に挑戦して、ロンをサポートするトランスジェンダーのレイヨンに扮したジャレッド・レトの演技に注目が集まるだろうが、やはり題材と切り口だ。想像力をはたらかせることで、いくらでも深くなる。

ランディ・シルツの大著『そしてエイズは蔓延した』(草思社)がカバーしていたのは、1980年から85年(終章に出版直前の87年のエピソードが少し盛り込まれているが)までだった。ロンは85年に宣告を受け、それから7年生きるから、彼の物語にはまさにその後が描かれる。

さらにFDA(米国食品医薬品局)を題材にしたフラン・ホーソンの『FDAの正体』(篠原出版新社)には、「一九八〇年代におけるFDAの最も恥ずべき汚点は、エイズ(AIDS)、つまり後天性免疫不全症候群の問題であった」という過去形の記述から「現在もなお、FDAに対する多くの批判がある」という記述に移行し、具体的な説明がつづいていく。そういう意味で、FDAと闘うロンの物語は決して過去の物語ではない。