『みんなで一緒に暮らしたら』 『ライク・サムワン・イン・ラブ』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『みんなで一緒に暮らしたら』 ステファン・ロブラン

フランス映画界の新鋭ステファン・ロブランの監督第2作。それほど遠くはない未来に死が訪れるであろう5人の老人たち(2組の夫婦と独身者)。昔から誕生日をともに祝ってきたこの仲間が自分たちの人生を守るために始めた共同生活がユーモアを交えて実に生き生きと描き出される。

ジェーン・フォンダやジェラルディン・チャップリンらのアンサンブルに加えて、犬の散歩係に雇われたことをきっかけに老人たちの観察者になっていく若者にダニエル・ブリュール(『グッバイ、レーニン!』『ベルリン、僕らの革命』)が扮している。

試写を観る前から面白そうな予感がしていたが、期待を上回る素晴らしい作品だった。老人たちの性をユーモラスかつ赤裸々に描いているところが魅力と思う人もいるかもしれないが、それは映画の表面的な要素に過ぎない。

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アッバス・キアロスタミ 『トスカーナの贋作』レビュー

Review

監督には性格が悪いところもないと面白い映画は作れない

『トスカーナの贋作』は、アッバス・キアロスタミがイランを離れてから初めて撮った長編作品だ。

物語はイタリアの南トスカーナ地方にある町アレッツォから始まる。『贋作』という著書を刊行したイギリスの作家ジェームズ・ミラー(ウィリアム・シメル)がこの町を訪れ、講演を行っている。会場にいた女(ジュリエット・ビノシュ)が、ぐずる息子をもてあまし、作家の著作の翻訳者にメモを渡し、その場をあとにする。

そのメモはジェームズに届けられ、彼の関心を引いたらしい。作家は彼女が経営するギャラリーを訪れ、二人は車でルチニャーノに向かい、美術館や町を散策する。贋作について議論を交わす彼らは、カフェの女主人に夫婦と勘違いされたことをきっかけに、夫婦のように振る舞いだす。

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『アンチクライスト』『トスカーナの贋作』試写

試写室日記

試写を2本観た。

『アンチクライスト』 ラース・フォン・トリアー

試写室で河原晶子さんにお会いする。河原さんは2度目だそうだ。

すごい映画だった。「死」→「喪」→「森」→「動物と人間」→「pain」→「nature」→「genocide」と、筆者が強い関心を持っている要素が、すさまじい映像の力で次々と押し寄せてきて、心の準備もできないままに心拍数が上がり、最後は異様な興奮状態に陥っていた。こういう体験ができる映画はめったにない。本当に病んでないとこういう映画は撮れないだろう。

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