『カラカラ』 「CDジャーナル」&劇場用パンフレット

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禅の世界に通じる喪失と再生の物語 1/19(土)より公開中

カナダ出身のクロード・ガニオン監督の新作『カラカラ』(12)。前作『KAMATAKI‐窯焚‐』(05)が素晴らしかったので、新作も楽しみにしていましたが、あの“炎”の力強さとはひと味違う、実に味わい深い作品になっています。モントリオール世界映画祭で、世界に開かれた視点賞・観客賞をダブル受賞しています。

カナダから沖縄にやって来た元大学教授ピエール(ガブリエル・アルカン)と夫と大喧嘩して家を飛び出した主婦・純子(工藤夕貴)の出会いから始まる一風変わったロードムービー。軽やかなドラマに見えて、日本語・英語・フランス語、酒器カラカラや芭蕉布、新良幸人の音楽などが織り合わさった世界はけっこう奥が深い。

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キラン・アルワリアと『灼熱の魂』とカナダの多文化主義をめぐって

トピックス

「るつぼ」とは違う「モザイク」が生み出す文化と相対主義のはざまで

カナダは世界に先駆けて国の政策として多文化主義を導入した。その政策には二本の柱があった。一本は、ケベック州と残りのカナダがひとつの国家としてどのように存在すべきなのかという課題に答えるものだ。カナダの多文化主義の功罪をテーマにしたレジナルド・W・ビビーの『モザイクの狂気』では、以下のように記されている。

同委員会の勧告に基づいて、公式の政策声明が出された。カナダには二つの建国民族――フランス人とイギリス人――がいると宣言された。これ以後、カナダは二つの公用語――フランス語と英語――を持つことになる。カナダ人は一生いずれの言語で暮らしてもよい。一九六九年、この考えは確固不動のものになった。公用語制定法の通過に伴い、異集団間を支える主要な二つの礎石の一つ――二言語併用主義――が据えられた

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