『シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった2人』記事



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二人のおばあちゃんが、経済の専門家を訪ね歩いて知識を吸収し、アメリカ経済に切り込んだ

告知がたいへん遅くなりましが、「ニューズウィーク日本版」で映画のコラム“映画の境界線”を担当させていただいております。初回は、『セバスチャン・サルガド / 地球へのラブレター』と『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』という写真家を題材にした2本のドキュメンタリーを、第2回はジェイク・ギレンホール主演の『ナイトクローラー』を、第3回は中国の新鋭リー・ルイジュンの『僕たちの家(うち)に帰ろう』を取り上げました。

そして昨日更新の第4回ではホバルト・ブストネス監督のドキュメンタリー『シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった2人』について書いています。記事をお読みになりたい方は以下リンクからどうぞ。

二人のおばあちゃんが、経済の専門家を訪ね歩いて知識を吸収し、アメリカ経済に切り込んだ

『コン・ティキ』 映画.com レビュー & 劇場用パンフレット

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ヘイエルダールの伝説の航海をいま映画化する意味とは

6月29日(土)から公開されているヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ監督の『コン・ティキ』に関する告知です。「映画.com」の6月19日更新の映画評枠に、「「人間中心主義を脱却した未来」を見据えた冒険映画」というタイトルのレビューを、さらに劇場用パンフレットに、「自然と人間の関係を問い直す伝説の航海」というタイトルのコラムを書いています。

ノルウェーの人類学者ヘイエルダールが成し遂げた伝説の航海には大いなるロマンがありますが、もしそれをリアルに再現しただけの映画であれば、筆者はそれほど心を動かされることはなかったでしょう。

ヘイエルダールがコン・ティキ号で大海原に乗り出した1947年から現在までの間に、自然と人間の関係は大きく変わりました。この映画は、そんな時間や変化を踏まえたうえで、伝説の航海を現代に再現していると思います。

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『オン・ザ・ロード』 『コン・ティキ』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『オン・ザ・ロード』 ウォルター・サレス

『セントラル・ステーション』『ビハインド・ザ・サン』『モーターサイクル・ダイアリーズ』のウォルター・サレス監督が、ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』を映画化した。

その導入部はひとつのポイントになる。映画は、サルの父親の死のエピソードから始まる。『オン・ザ・ロード』の1957年刊行版は妻との離婚から始まる。父親の死から始まるのは、ケルアック自身が手を加える前のオリジナル版(『スクロール版オン・ザ・ロード』として刊行されている)だ。

サレスはオリジナル版のほうにだいぶインスパイアされているように見える。それが父親へのこだわりに表れている。

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今週末公開オススメ映画リスト2013/03/28

週刊オススメ映画リスト

今回は、『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』『隣人 ネクストドア』『チャイルドコール 呼声』の3本に、“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”で特集上映される3作品『グッバイ・ファーストラブ』『スカイラブ』『ベルヴィル・トーキョー』を加えた計6本です。

『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』 佐々木芽生

2010年に公開されてロングランを記録したドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』の続編です。但し、前作を観ていなくともわかるような構成になっています。この2作品の魅力は、“小さいことがとても大きなものにつながる”という言葉に集約できます。

郵便局員と図書館司書だったハーブとドロシー夫妻は、独自の審美眼と類希な情熱で、お給料で買えて1LDKのアパートに収まるアートを買い集め、それがいつしか世界でも屈指の歴史に残るアートコレクションになります。ふたりはそのコレクションを一点も売ることなく、アメリカの国立美術館に寄贈します。それが前作の物語でした。

この続編では、その国立美術館でさえも夫妻の大量のアートをすべて受け入れることが不可能であることが判明し、全米50州の美術館に50作品ずつ、計2500点を寄贈するプロジェクトが動き出します。そのプロジェクトが背景になっているので、ハーブとドロシーとともに、全国に散っていったコレクションを訪ねて歩くロード・ムービーと見ることもできます。

ハーブとドロシーはコレクターとして作品を買うだけではなく、アーティストの成長や作品の変化を追いかけ、その本質を知ろうとすることによって、アーティストたちと親密な関係を築き上げてきました。そういう意味では、ハーブとドロシーが親で、アーティストが子供たちで、彼らの作品が孫ともいえます。この映画は、コレクションが分散するという難しい選択を通して、そんな親密な関係を再確認していく物語ともいえます。

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『パパの木』 『チャイルドコール 呼声』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『パパの木』 ジュリー・ベルトゥチェリ

長編劇映画デビュー作『やさしい嘘』(03)で注目を浴びたフランス出身の女性監督ジュリー・ベルトゥチェリの新作。どちらも愛する者の死を残された家族がどのように受け入れていくのかを描いていることになる。

オーストラリアの辺境に暮らす主人公一家は突然、大黒柱を喪うが、まだ幼い末娘のシモーンは、庭の巨木に父親がいると信じ、その思いが次第に家族に伝わっていく。

特殊効果を使うようなスーパーナチュラルな表現は一切やらず、すべてが自然との繋がりで描かれる。その自然がなかなか凄い。夜に窓を開けていると、突然なにかが飛び込んできて、部屋を舞う。それは巨大なコウモリなのだが、そんな野生の生き物に当たり前に取り巻かれた世界に引き込まれる。

一家は巨木に象徴される自然を通して、彼らにとって最も大切なものに目覚めていく。ジュディ・パスコーの『パパの木』という原作があるためかどうか定かではないが、安易に神秘性に頼ってしまうでもなく、感傷に流されるでもなく、母親が最後に口にする台詞に集約されるように、筋が一本通っていて実にいい映画である。詳しいことはまたレビューで書きたい。

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