『日本の悲劇』 レビュー & 小林政広監督インタビュー



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孤立する家族、無縁社会、格差、3.11の悲劇、そして即身仏

遅くなってしまいましたが、8月31日(土)より公開中の小林政広監督の新作『日本の悲劇』に関する告知です。

東京都内で111歳とされる男性のミイラ化した遺体が見つかり、家族が年金を不正受給していた事件は大きな注目を集めました。小林監督が『日本の悲劇』を作るうえでインスパイアされたのは、この年金不正受給事件です。

主人公は、古い平屋に二人で暮らす老父とその息子です。妻子に去られた失業中の息子は、老父の年金に頼って生活しています。そして、自分が余命幾ばくもないことを知った老父は、自室を閉鎖し、食事も水も摂らなくなります。

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『オン・ザ・ロード』 映画.com レビュー & 劇場用パンフレット

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小説の主人公サルを通してケルアックの複雑な内面に迫る

8月30日(金)より公開になるウォルター・サレス監督の新作『オン・ザ・ロード』に関する告知です。原作はビート文学を代表するジャック・ケルアックの『路上/オン・ザ・ロード』です。

「映画.com」の8月27日更新の映画評枠に、“父親とフロンティアの喪失によってもたらされた作家ケルアックの覚醒の瞬間” というタイトルのレビューを、さらに劇場用パンフレットに “「彼」の内面が浮き彫りにされた、映画『オン・ザ・ロード』の世界” というタイトルのレビューを書いています。

映画.comのレビューは、フランス語を母語として育ったケルアックとポルトガル語を母語とするサレス監督を意識した内容になっています。先に本ブログの『オン・ザ・ロード』試写室日記をお読みになると、よりわかりやすいかと思います。

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『トゥ・ザ・ワンダー』 劇場用パンフレット

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彼女を目覚めさせ、
解放するもの

告知がたいへん遅くなってしまいましたが、8月9日(金)より公開中のテレンス・マリック監督の新作『トゥ・ザ・ワンダー』の劇場用パンフレットに上記タイトルでレビューを書いています。

これまでマリックは作品の時代背景を50年代か、それ以前の時代に設定し、同時代を正面から描くことがありませんでしたが、この新作では現代の世界を描いています。

ただしマリックのことですから、もちろん現代だけを見つめているわけではありません。新作には、前作『ツリー・オブ・ライフ』のような宇宙や生命の起源をめぐる大胆な表現は見られませんが、そんな独自の視点は日常的な世界の細部に引き継がれています。

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『ローン・レンジャー』 劇場用パンフレット

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『パイレーツ』3部作とは異なるアプローチで挑んだジェリー×ゴア×ジョニーの会心作

告知がたいへん遅くなってしまいましたが、8月2日(金)より公開中の『ローン・レンジャー』の劇場用パンフレットに、上記のようなタイトルでレビューを書いています。

この『ローン・レンジャー』を、ジェリー・ブラッカイマーとゴア・ヴァービンスキーとジョニー・デップという『パイレーツ』シリーズのチームが作り上げた新たなエンターテイメント大作と受け止めることはもちろん間違いではないのですが、三者のバランスは明らかに『パイレーツ』とは違います。

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『コン・ティキ』 映画.com レビュー & 劇場用パンフレット

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ヘイエルダールの伝説の航海をいま映画化する意味とは

6月29日(土)から公開されているヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ監督の『コン・ティキ』に関する告知です。「映画.com」の6月19日更新の映画評枠に、「「人間中心主義を脱却した未来」を見据えた冒険映画」というタイトルのレビューを、さらに劇場用パンフレットに、「自然と人間の関係を問い直す伝説の航海」というタイトルのコラムを書いています。

ノルウェーの人類学者ヘイエルダールが成し遂げた伝説の航海には大いなるロマンがありますが、もしそれをリアルに再現しただけの映画であれば、筆者はそれほど心を動かされることはなかったでしょう。

ヘイエルダールがコン・ティキ号で大海原に乗り出した1947年から現在までの間に、自然と人間の関係は大きく変わりました。この映画は、そんな時間や変化を踏まえたうえで、伝説の航海を現代に再現していると思います。

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