『プリピャチ』劇場用パンフレット

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事故から12年後のチェルノブイリ、ゾーンのなかで生きる人々

“プリピャチ”とは、チェルノブイリ原発から4キロのところにあり、かつては発電所の労働者たちが暮らしていた街の名前だ。また、原発の脇を通ってドニエプル川に合流する川の名前でもある。この映画は事故から12年を経た時点で、原発から30キロ圏の立入禁止区域に暮らしていたり、そこで働いている人々の日常や彼らの言葉を記録したドキュメンタリーだ。

事故後、一度は移住したものの、故郷に戻ってきてそこで暮らしている老夫婦、事故以前からの職場だった環境研究所で働きつづけている女性、2000年まで運転が継続されていた発電所の3号機で働く技術者といった人々が登場する。『いのちの食べかた』のニコラウス・ゲイハルター監督の1999年作品。

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『メランコリア』 劇場用パンフレット



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鬼才ラース・フォン・トリアー最新作!2月17日(金)ロードショー

『奇跡の海』や『ダンサー・イン・ザ・ダーク』にも心を激しく揺さぶられたが、フォン・トリアーがうつ病を体験してから作り上げた『アンチクライスト』と『メランコリア』には、単に心の病とみなされるだけのものではなく、渡辺哲夫が“生命の輝きそのもののような狂気”と表現するものに匹敵するような、これまでと異なる次元から人間と世界を見切っているような凄みがある。

『メランコリア』の劇場用パンフレットに「人間の在り方を原点から問い直す――鬼才トリアーの世界」というタイトルで作品評を書いております。筆者がいま関心を持っていることのど真ん中にくるような作品で、深く深く引き込まれました。『メランコリア』の試写室日記もお読みください。いろいろ参考になるかと思います。

キャストも素晴らしいです。特に女優陣。キルスティン・ダンストとシャルロット・ゲンズブールが対極の世界観を見事に体現しているうえに、シャーロット・ランプリングが少ない出番のなかで強烈な存在感を放っています。

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『ハンター』 映画.com レビュー&劇場用パンフレット

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ウィレム・デフォー主演のオーストラリア映画、2月4日公開!

ダニエル・ネットハイム監督の『ハンター』はあなどれない。最近はなんでも説明してしまうテレビドラマのような作品が少なくないが、この映画はそういう要素をいさぎよく削ぎ落としていく。さらに、モノローグやフラッシュバックを使いたくなるようなところでもまったくそれをやらない。徹底していて気持ちがいい。

だからこちらが想像力を働かせる余地がたっぷり残されている。最後のタスマニアタイガーや自然、あるいは死者と主人公の関係を描くこの映画には、そういう言葉や説明に頼らない表現がふさわしい。

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『80年代アメリカ映画100』ついに完成!



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現在から見直すアメリカ80年代
2011年12月22日発売

今年、作業を進めてきた大きなお仕事といえば、『80年代アメリカ映画100』と『90年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)の2冊。2010年12月に刊行された『ゼロ年代アメリカ映画100』の姉妹編です。『ゼロ年代~』ではコラムの執筆者のひとりでしたが、今回は編集にも参加させていただきました。

  • 『80年代アメリカ映画100』(2011年12月22日発売)
    [監修]北沢夏音 [主編]渡部幻 [編集]大場正明、佐野亨
  • 『90年代アメリカ映画100』(2012年発売予定)
    [監修]大場正明 [主編]佐野亨 [編集]北沢夏音、渡部幻

という布陣です。

そしてまず『80年代アメリカ映画100』が発売になりました。豪華執筆陣や作品のラインナップについては以下リンクでチェックしていただければと思います。
芸術新聞社 80年代アメリカ映画100

『80年代アメリカ映画100』

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『灼熱の魂』劇場用パンフレット



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カナダの異才ドゥニ・ヴィルヌーヴの独自の話術と世界に迫る

カナダのアカデミー賞であるジニー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞など主要8部門を独占し、米国アカデミー賞の最優秀外国語映画賞にノミネートされた傑作『灼熱の魂』。この映画の劇場用パンフレットに「物語の力――偶然と必然の鮮やかな反転」というタイトルで作品評を書いています。

これを読めばどうしてももう一度観たくなる。そういう原稿になっていると思います。劇場で作品をご覧になりましたらぜひパンフもチェックしてみてください。