『ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀』 『愛、アムール』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀』 フィリップ・カーデルバッハ

1937年に起こった巨大飛行船ヒンデンブルグ号の爆発炎上事故を題材にしたドイツ映画。もとはテレビ映画として製作された作品で、グレタ・スカッキやステイシー・キーチなども出演している。もともと180分だったものを110分に刈り込んでいるので、いきなりかと思うところもないではないが、非常に手堅い演出で破綻はしていない。

70年代に同じ事故を題材にしたロバート・ワイズ監督の『ヒンデンブルグ』という作品があった。詳しいことは覚えていないが、飛行船に爆弾を仕掛ける目的は“反ナチス”だった。この映画の場合には、グローバリゼーションの時代を意識したような経済に関わる背景が盛り込まれている。

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ルカ・グァダニーノ 『ミラノ、愛に生きる』 レビュー

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グローバリゼーションに呑み込まれていく一族、自然のなかで心と身体を解き放つヒロイン

繊維業で成功を収めた富豪のレッキ一族に嫁ぎ、成人した三人の子供の母親として何不自由ない生活を送るエンマ。そんなヒロインが、息子の友人と恋に落ち、本当の自分に目覚めていく。ルカ・グァダニーノ監督のイタリア映画『ミラノ、愛に生きる』は、表面的にはメロドラマだが、そのありがちな展開のなかで社会の変化や個人のアイデンティティが実に巧妙に掘り下げられていく。

物語は雪化粧した冬のミラノ、エンマの義父である一族の家長の誕生日を祝うパーティの場面から始まる。そこに漂う格式ばった雰囲気は、一族の揺るぎない秩序を象徴している。だが、家族のやりとりには変化の兆しが見える。しかもその兆しは、かすかな不協和音を響かせている。

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マッテオ・ガッローネ 『ゴモラ』 レビュー

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カモッラの実態に迫ることは、イタリアとはなにかを問うことでもある

2008年にカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得したマッテオ・ガッローネ監督の『ゴモラ』では、イタリア南部ナポリを拠点に絶大な権力を振るう犯罪組織“カモッラ”の世界が描き出される。彼らの支配は麻薬取引や武器密輸からファッションブランドの縫製や産業廃棄物の処理事業にまで及び、組織に従わない者は冷酷に排除されていく。

映画の原作である『死都ゴモラ』の著者ロベルト・サヴィアーノは、自らカモッラに潜入し、その実態を明らかにしてみせた。それだけにこの映画にはドキュメンタリーのようにリアルな空気が漂っているが、魅力はそれだけではない。

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ゲラ・バブルアニ 『ロシアン・ルーレット』 レビュー

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アウトサイダー的俳優陣が放つ存在感

ロシアン・ルーレットが描かれた作品として多くの人が真っ先に思い出すのは、おそらくベトナム戦争を題材にしたマイケル・チミノ監督の『ディア・ハンター』だろう。この映画では、反政府組織の捕虜になった主人公たちがロシアン・ルーレットを強要される。そして彼らのひとり、ニックは精神を病み、この死のゲームにとり憑かれていく。

他にも、たとえば北野武監督の『ソナチネ』(93)では、沖縄の抗争に巻き込まれ、浜辺の廃屋に身を隠している主人公のヤクザが、舎弟とロシアン・ルーレットをはじめる(舎弟は青ざめるが、後で弾が入ってなかったことがわかる)。

エミール・クストリッツァ監督の『アリゾナ・ドリーム』(92)では、自殺願望を持つ娘グレースが、主人公アクセルにロシアン・ルーレットを持ちかける。ダニー・ボイル監督の『ザ・ビーチ』(99)では、タイの孤島にある秘密の楽園のリーダーが、他人に情報を漏らした主人公リチャードに、1発だけ弾を込めた銃を向ける。

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マイケル・ウィンターボトム・インタビュー

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現代のインドに舞台を移せば、トマス・ハーディの世界がダイナミックに展開できると思った

マイケル・ウィンターボトム監督に取材でお伝えしたインタビューの記事がTIFFのサイトにアップされました。三度目の映画化となるハーディの作品のことから、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンの曲も使われている音楽のことまでいろいろ質問しています。

なかでも筆者が特に興味を覚えたのは、ツーリズムやポストコロニアリズムに関する発言ですね。ウィンターボトムがミシェル・ウエルベックの『プラットフォーム』の映画化を切望していたことを覚えていて、この小説を読んでいる方にはかなり興味深い発言なのではないかと思います。

インタビューは↓こちらからどうぞ。
【公式インタビュー】コンペティション『トリシュナ』