ヤセミン・サムデレリ・インタビュー 『おじいちゃんの里帰り』:ユーモラスに綴られたトルコ系移民家族の物語

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実体験が埋め込まれた監督姉妹の脚本

トルコ系ドイツ人の監督といえば、ファティ・アキンがすぐに思い出される。女性監督ヤセミン・サムデレリは、そのアキンと同じ1973年生まれのトルコ系二世だが、本国で7ヶ月のロングランとなった監督デビュー作『おじいちゃんの里帰り』では、アキンとはまた違った独自の視点でトルコ系移民の世界を描き出している。

彼女はコメディにこだわり、三世代の家族の過去・現在・未来を見つめていく。一家の主は、60年代半ばにトルコからドイツに渡り、がむしゃらに働いて家族を養い、齢を重ねて70代となったフセイン。そんな彼が里帰りを思いつき、それぞれに悩みを抱える家族がマイクロバスに乗り込み、故郷を目指す。さらに、家族の歴史の語り部ともいえる22歳の孫娘チャナンを媒介に挿入される過去の物語では、若きフセインがドイツに渡り、妻子を呼び寄せ、言葉も宗教も違う世界に激しく戸惑いながら根を下ろしていく。

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『おじいちゃんの里帰り』 ヤセミン・サムデレリ・インタビュー 「キネマ旬報」掲載

News

ユーモラスに綴られたトルコ系移民家族の物語

トルコ系ドイツ人二世の女性監督ヤセミン・サムデレリの長編デビュー作、ドイツで30週以上のロングランとなり、150万人動員の大ヒットを記録した『おじいちゃんの里帰り』(11)が、2013年11月30日(土)より公開になります。

本日発売の「キネマ旬報」2013年12月上旬号に、上記のタイトルでヤセミン・サムデレリ監督のインタビューが掲載されています。全4ページで、筆者の考察も盛り込み、ボリュームのある記事になっています。

この映画、ヤセミンと実妹ネスリンが手がけた脚本がまず素晴らしい。60年代半ばにトルコからドイツに渡り、がむしゃらに働き、70代となったフセイン。そんな彼が里帰りを思いつき、それぞれに悩みを抱える三世代の家族がマイクロバスに乗り込み、故郷を目指します。さらに、家族の歴史の語り部ともいえる22歳の孫娘チャナンを媒介に挿入される過去の物語では、若きフセインがドイツに渡り、妻子を呼び寄せ、言葉も宗教も違う世界に激しく戸惑いながら根を下ろしていきます。

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ファティ・アキン 『トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~』 レビュー



Review

世界の現状、その縮図としての小さな村のゴミ騒動

30代にしてカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの三大映画祭での受賞を成し遂げたトルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督の新作は、劇映画ではなくドキュメンタリーだ。

彼はこれまでにもトルコ音楽に迫る『クロッシング・ザ・ブリッジ』を作っているが、今回はゴミ問題というより社会的な題材を取り上げている。

その舞台は、アキンの祖父母の故郷であるトルコ北東部トラブゾン地域の村チャンブルヌ。映画は、自然に恵まれた村に暮らす住人たちの生活が、銅鉱山の跡地に建設されたゴミ処理場によって破壊されていく過程を生々しく映し出していく。

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『アジア映画の森――新世紀の映画地図』に寄稿しています

News

進化しつづけるアジア映画を網羅した決定版ガイドブック登場!

東は韓国から西はトルコまで、アートからエンターテインメントまで、アジア映画を国別の概論、作家論、コラムなどで網羅したガイドブック『アジア映画の森』が出ました(2012年5月31日発売)。

表紙は、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『ブンミおじさんの森』。いいですねー(筆者が劇場用パンフレットに書いた『ブンミおじさんの森』レビューもぜひお読みください)。

執筆者は以下の方々です。麻田豊/アン・ニ/石坂健治/市山尚三/稲見公仁子/井上徹/宇田川幸洋/浦川留/大場正明/岡本敦史/金子遊/金原由佳/葛生賢/斉藤綾子/佐野亨/白田麻子/杉原賢彦/鈴木並木/諏訪敦彦/夏目深雪/野崎歓/野中恵子/萩野亮/梁木靖弘/クリス・フジワラ/古内一絵/古川徹/松岡環/松下由美/門間貴志/四方田犬彦(敬称略)。

『アジア映画の森――新世紀の映画地図』(作品社、368ページ)

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『羅針盤は死者の手に』 『転山』 『ホーム』 試写

試写室日記

22日から始まるTIFF(東京国際映画祭)の上映作品を3本。

『羅針盤は死者の手に』 アルトゥーロ・ポンス

メキシコの新人監督アルトゥーロ・ポンスの長編第一作。主人公は、シカゴにいる兄と暮らすためになんとか国境を越えようとする13歳の少年チェンチョ。国境の手前で立ち往生していた彼は、馬車に乗った老人に拾われるが、老人はコンパスを握ったまま死んでしまう。そして少年が死者と旅を続けていると、様々な事情を抱えた人々がそこに乗り込んできて…。

ブニュエルの世界を想起させるような作品であり、マジック・リアリズム的な感性から紡ぎ出される奇妙な物語ともいえる。評価は分かれるだろうが筆者は面白かった。馬車がジェリコーの『メデューズ号の筏』を思わせる世界になり、堂々巡りを繰り返すこの乗り物がメキシコの縮図に見えてくる。

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