『おとなのけんか』 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『おとなのけんか』 ロマン・ポランスキー

フランスの劇作家ヤスミナ・レザの戯曲「God of Carnage」(日本上演タイトル「大人は、かく戦えり」)の映画化。息子同士の喧嘩に始末をつけるためにアパートの一室に集まった二組の夫婦。なごやかな雰囲気のなかで和解にいたると思いきや、ささいな出来事がきっかけで次々と本音が飛び出し、壮絶な舌戦へと発展していく。

ニューヨークのブルックリンを舞台にしているということだけで、そこにポランスキーが含みを持たせているように思えて、にんまりさせられる。

ポランスキーは30年前の淫行事件があるためアメリカに入国できない。だから舞台がアメリカに設定されていてもアメリカでは撮っていない、というのは前作の『ゴーストライター』も同じだが、今回の題材はちょっと事情が違う。

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『麒麟の翼』 『ドラゴン・タトゥーの女』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『麒麟の翼』 土井裕泰

東野圭吾の加賀恭一郎シリーズの最新作の映画化。作品になにを期待しているかで満足度が変わってくると思う。土井監督ということでとにかく「泣ける映画」を観たいという人はおそらく満足できるだろう。

筆者の場合は原作は未読で、原作にそれほど興味もなく、テレビの「新参者」の加賀のキャラクターがちょっと面白いと思った口で、要はストーリーではなくキャラクターに期待をしていたのだが、そそられる加賀にはなっていなかった。

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『スター・ウォーズ』神話の根底にあるものとは?

トピックス

フォースの暗黒面やダース・ベイダーに象徴される悪の位置づけ

神話学者ジョゼフ・キャンベルが世界各地の英雄伝説に共通する基本構造を抽出してみせた『千の顔をもつ英雄』。ジョージ・ルーカスがこのキャンベルの代表作からインスピレーションを得て『スター・ウォーズ』の世界を創造したことはよく知られている。また、デール・ポロックのルーカス伝『スカイウォーキング』によれば、カルロス・カスタネダの『未知の次元』も大きな影響を及ぼしているという。

『スター・ウォーズ』シリーズとキャンベルやカスタネダの著書には深い結びつきがあるが、それらを照合してもルーカスの世界が見えてくるわけではない。『スター・ウォーズ』という神話の特徴は、イニシエーションやシャーマニズムよりも、フォースの暗黒面やダース・ベイダーに象徴される悪の位置づけにある。

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ダグ・リーマン 『フェア・ゲーム』 レビュー

Review

イラクの大量破壊兵器をめぐるブッシュ政権・CIA上層部の陰謀

実話に基づく『フェア・ゲーム』の主人公は、幼い双子の母親でもあるCIA諜報員のヴァレリー、そして彼女の夫で元外交官のジョーだ。物語は9・11以後、イラク侵攻に前後する時期を背景にしている。

中東地域を担当するヴァレリーは、在米の親族を通してイラク人科学者から情報を引き出し、大量破壊兵器が存在しないことを突き止める。元ニジェール大使だったジョーも、国務省の要請でニジェールに赴き、イラクのウラン購入の情報が信憑性に欠けることを確認する。

ところがブッシュ政権は情報を無視して開戦に踏み切る。危機感を覚えたジョーは新聞で自身の調査に基づく事実を明らかにするが、その直後にヴァレリーの正体がリークされ、夫婦は政治的な圧力と誹謗中傷にさらされていく。

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デブラ・グラニック 『ウィンターズ・ボーン』 レビュー

Review

ホモソーシャルな連帯とミソジニー、そしてもうひとつのスピリット

アメリカのなかでアパラチアやミズーリ州オザーク地方に暮らす人々は、“ヒルビリー”と呼ばれ蔑まれてきた。注目の新鋭女性監督デブラ・グラニックがミズーリ州でオールロケを行い、現地住民も含むキャストで撮り上げたこの『ウィンターズ・ボーン』には、彼らの独自の世界が実にリアルに描き出されている。

心を病んだ母親に代わって幼い弟と妹を引き受け、一家の大黒柱になることを余儀なくされた17歳の娘リーに、さらなる難題がふりかかる。とうの昔に家を出た麻薬密売人の父親が逮捕されたあげく、土地と家を保釈金の担保にして行方をくらましてしまったのだ。彼女は家族を守るためになんとか父親を探し出そうとするが…。

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